【本会議】平成26年3月4日 第一回定例会 代表質問
◯百十三番(吉原修君) 平成二十六年第一回東京都議会定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問させていただきます。
先月二十八日、天皇皇后両陛下におかれましては、昨年十月に台風被害に見舞われた大島町を行幸啓されました。被災地域をご視察されるとともに、島民に温かいお言葉をかけられました。また、今月十一日で東日本大震災から丸三年になります。我が国は、長い歴史の中で、厳しい自然災害を強いきずなで助け合い乗り越えてきました。我が党は、大島の復興に尽力し、東北の被災地を片時も忘れず、さらに、将来の災害への備えに万全を期していく決意を表明し、質問に入ります。
さて、我が国は安倍政権のもと、景気回復の動きが広がり、長きにわたる低迷を脱しつつあります。今こそ、この歩みを確かなものにしなければなりません。また、六年後にはオリンピック・パラリンピック大会があります。その先には、グローバルな都市間競争が激しさを増す中で、かつてない超高齢社会を迎えることになります。こうした状況にあって、次の時代においても輝き続ける東京をつくり、日本の再生を牽引することが我々の責務です。これを果たすべく、昨年の都議会議員選挙で掲げた十本の柱から成る政策集、東京を世界で一番の都市にの実現に全力を傾注してまいります。
今回の知事選によって、我が党と共通の目標を持つ知事が誕生いたしました。我々は、協力すべきはしっかりと協力するとともに、建設的な提案を引き続き行っていきます。知事と議会が車の両輪となり、本質を捉えた地に足のついた取り組みをともに練り上げていくことこそ、都政を前進させ、都民の負託に応える道であります。都政は、オリンピック・パラリンピック開催を初め、災害に強い安全な都市づくり、高齢者や障害者が地域で安心して暮らせる社会の実現、首都東京からの景気回復、経済再生、次代を担う子供たちの知力、体力、人間力を育み伸ばす教育の充実など、東京のみならず日本の将来をも左右する重要課題に果敢に挑戦し、結果を出していかなければなりません。それゆえ、舛添知事には、長期的な視点も持ち、都政全般にわたって、どのような政策をいつまでにどう実現していくのかを明らかにし、都政本来の姿を体現してほしいと願っております。新しくかじ取りを担うこととなった知事に、都政運営の基本姿勢について、まずお伺いをいたします。
次に、財政運営について伺います。我が国の経済は長らく続いた低迷を脱し、ようやく回復軌道に乗りつつあります。このよい流れを経済の好循環につなげていくためには、東京が日本の経済の牽引役としての責任を果たしていかなければなりません。我が党は、知事と力を合わせ、東京を世界で一番の都市にするという都民との約束の実現に向けて、全力で取り組んでいく決意であります。その際、重要となるのは、財政の裏づけであります。幸い、足元の都税収入は回復の兆しが見られますが、わずか十年前には、都議会と執行機関が協力しながら、血のにじむような財政再建に取り組んでいた、そのことを忘れてはなりません。都財政は一国の国家財政にも匹敵する力を有している、だからこそ、決してそのかじ取りを誤ってはならないのです。そこで、公約の実現に向け、どのように都財政を運営していくのか、知事の考えをお伺いいたします。
また、先月発表された平成二十六年度予算案の発表では、知事の指示で、一月に公表された予算の暫定案から、約七十七億円の事業が追加されています。そこで、どのような考えに基づき事業の追加を指示されたのか、知事の考えを伺います。
次に、世界に発信する首都東京としての取り組みについて何点か伺います。初めに、アジア大都市ネットワーク21について伺います。都はこれまで、さまざまな機会を捉え、積極的に都市外交を展開してきました。とりわけ成長著しいアジアの諸都市に対しては、東京の持つ現場の力を踏まえ、さまざまな分野で互いに協力を行うなど、実のある交流を深めています。都議会自民党は、その中でも特に、アジア大都市ネットワーク21が新型インフルエンザや震災といった危機管理、環境政策などにおいて独自の切り口で多くの成果を上げてきたことを高く評価しています。都市に共通する課題をともに解決するとともに、東京と日本の今後の発展のためにも、この取り組みはますます重要になると考えます。知事は公約で、世界の都市との結びつき、経済関係を強化し、日本文化を発信し、草の根レベルでの人的交流を推進します、東京力を集約して東京という世界有数の都市だからこそできる多元的で品格のある都市外交を展開していきますと述べています。これはまさに、アジア大都市ネットワーク21のこれまでの取り組みと軌を一にするものであります。そこで、今後どのように進めていくのか、知事の所見を伺います。次に、環境分野における国際協力の推進について伺います。都市が抱える共通の課題、特に環境問題は、まさに都市間の協力が不可欠であり、それぞれの得意分野を生かし、補い合うことで解決策が見出せるはずです。現在、アジアの諸都市では、驚異的な経済成長と背中合わせに、大気汚染、あるいは廃棄物などの環境問題が深刻化しています。かつて同じ問題に対峙してきた東京の経験は、急成長の著しいアジアの諸都市にとって極めて有益であり、都は、環境施策や技術等のノウハウを海外の諸都市に積極的に提供すべきと考えます。これまでの取り組みを踏まえ、今後、環境分野における国際協力をどのように進めていくのか伺います。次に、東京水道の国際展開について伺います。安倍総理は、アジア諸国を中心に諸外国を訪問し、官民連携によるインフラ輸出を進めています。アジアの途上国では、経済発展に伴う人口増加により、安全な水の供給が追いつかないほど深刻な水問題が生じています。インフラ事業の中でも特に水分野に関しては東京に対する期待感が高く、助けてほしいという声が聞こえてきます。我が党は、こうした声に応えるため政策研究会を立ち上げ、相手国の発展を支援する活動を行うとともに、都に対して政策提言を行ってまいりました。世界一の東京水道の技術を生かした国際貢献は、アジアの水事情の改善はもとより、日本企業の海外進出、ひいては日本経済の活性化にもつながります。アジアの水問題を解決していくためには、水の国際展開を一層進めていくべきと考えます。知事の見解を伺います。
次に、国家戦略特区について伺います。我が国の国際競争力を強化し、国際的な経済活動の拠点を形成することは、日本経済を再生する上で喫緊に取り組むべき課題であります。安倍政権でも経済政策には全力で取り組んでおり、我が国経済の中心に位置する首都東京にとっても極めて重要であります。 こうした中、国は、安倍政権の成長戦略、日本再興戦略のかなめである国家戦略特区の指定を今月中に行おうとしています。都も国の動きをにらみながら、規制、制度改革に取り組むなど、東京に世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくっていかなければなりません。そこで、国家戦略特区についての知事の基本的な考えをお伺いいたします。
次に、国際コンテナ戦略港湾について伺います。東京港は、日本のコンテナ貨物取扱量の四分の一を占める、日本を代表するメーンポートであり、アベノミクスによる成長戦略には欠かすことのできない重要な物流インフラであり、国際競争力の強化に最大限の力を尽くさなければなりません。こうした状況において、国土交通省は、国策と称して、平成二十二年に国際コンテナ戦略港湾政策を打ち出しましたが、この中には、国際競争力向上に資する具体策がない一方で、地方分権に逆行する港湾運営会社制度の創設が含まれていることに違和感を覚えます。国は今国会で、統合した会社に対する国の出資制度を新設した港湾法の改正を予定しており、自治体が戦後一貫して担ってきた港湾の経営に国みずからが乗り出そうとしております。これは、国自身が唱えてきた民の視点の活用にも矛盾するばかりでなく、荷主など利用者のきめ細かなニーズをも酌み取れず、現場に大きな混乱をもたらすものであり、断じて許せるものではありません。日本の成長戦略を支える東京港のさらなる発展に向けて、柔軟で機動的な港湾運営がなされるよう、港湾管理者として現場を熟知した都が引き続き責任を持って、その経営に当たっていくべきだと思います。今後、東京港の経営にどのように取り組んでいくのか、知事の見解を伺います。
次に、海外に向けた新たな広報の展開について伺います。アジアの諸都市が急速に発展を遂げるなど、東京は厳しい都市間競争にさらされており、東京が埋没してしまうと日本の活力が失われることにつながりかねません。治安のよさやホスピタリティーなどの東京の魅力がどう成り立っているかは、これまで世界の人々にはよく知られてきませんでした。我が党は、東京を世界で一番の都市にを発展させるために、六年後のオリンピック・パラリンピック開催に向け東京のよさを改めて世界に強くアピールするには、これまでの行政広報の枠組みを抜本的に転換し、民間とも連携した海外向け広報を導入する必要があると考えますが、知事の考えを伺います。また、海外に東京の魅力を発信するには、欧米、アジア向けなど対象地域ごとに、東京の認知度や評価に直接つながる最も適切な内容や媒体を選択することが重要となります。今後、海外向け広報の取り組みを具体的にどう進めていくのか伺います。東京の課題を解決するためには、海外の諸都市との連携のみならず、他の自治体との連携を推進することも必要であります。大都市東京の経済圏や生活圏は自治体の範囲を超えて広がっており、環境問題や防災など多くの課題が広域的でより複雑化したものになっています。こうした課題の解決には、既存の自治体の枠にとらわれず、他の道府県や政令市などと連携した対応が不可欠であります。都はこれまでも、みずからが旗振り役となって、首都圏の九都県市連携によるディーゼル車規制や災害時の帰宅困難者対策など、広域的な取り組みを実施し成果を上げてきました。今後も積極的な取り組みが求められますが、知事は他の道府県、政令市との広域的な連携をどのように考えていかれるのか、見解を伺います。
次に、高度防災都市づくりの実現に向けて、ハード及びソフト両面から伺いたいと思います。東日本大震災から間もなく三年が経過いたします。この震災の教訓を生かすべく、我が党は二度にわたり具体的な提言を示し、木密地域の改善や津波、高潮対策など、東京の防災力向上に積極的に取り組んできました。首都東京の防災は、まさに我が国の将来を左右する大きな命題であります。我々が対処すべきリスクは大地震だけではありません。昨年十月には、記録的な豪雨がもたらした土砂災害により大島町で多くのとうとい命が犠牲となりました。一方、周辺国では、地球温暖化に起因する大災害や、新型インフルエンザといった新たな脅威にさらされております。加えて、アジアを代表する国際都市である東京は、テロ等の脅威にもさらされる可能性を含んでいることは否定できません。世界一安全・安心な東京を実現するため、都民の命を預かる知事は、こうしたさまざまな危機に対し積極果敢に取り組んでいただきたいものです。どのような姿勢で臨まれるのか見解を伺います。
次に、首都直下地震などに備えた初動対応力の強化について伺います。首都直下地震などの大規模災害から都民の命を守るためには、災害直後の七十二時間の対応が鍵を握ります。自衛隊、警察、消防等が有機的に連携し、実効性ある活動を行うことが都民の生命を左右します。昨年の大島の土砂災害でも、各機関による応援部隊が大変重要な役割を果たしました。こうした機関が連携し、発災直後、直ちに活動できるよう、我が党はこれまでも実効性ある初動体制を確立するよう求めてきました。都では、関係機関の連携方法や手順等を定める首都直下地震等対処要領を今年度中に策定することとしていますが、この対処要領をもとに、市区町村も含む関係機関同士の情報共有方法の確立や、大規模救出救助活動拠点となる都立公園等の機能強化を図るなど、実効性を高めていく取り組みが必要と考えます。今後、都はどのように取り組むのか伺います。
近年、異常気象が続き、ゲリラ豪雨や巨大化した台風が襲うなど、これまで経験したことのない豪雨が各地各所で大きな被害を与えています。都内でも、昨年、七百棟を超える浸水被害が発生し、浸水対策の強化が喫緊の課題となっています。我が党は、安全・安心ビジョン、災害に強い安全な東京をつくるの提言の中で、異常気象から東京を守るゲリラ豪雨対策を推進する政策として、下水道整備などを進め浸水被害を克服することを提案しています。これに応え下水道局は、新たな視点を含めて豪雨対策下水道緊急プランを昨年十二月に策定し、浸水対策の強化を図るとしていますが、このプランの策定の意義と主な取り組み内容について伺います。昨年十月、台風二十六号は甚大な被害をもたらし、大島では三十六名のとうとい命が失われました。四カ月余りがたった現在でも三名の方々が行方不明であり、今なお爪跡は深刻です。都は、我が党の要請に応え、今年度補正予算案と来年度当初予算案において、道路、港湾施設などのインフラ復旧など、大島町に対する特別交付金制度の創設など、合計百四十九億円の事業を取りまとめていることは評価しています。 しかしながら、被害の大きかった元町地区から三原山を見上げると、目の前に被災地域が広がり、今回の災害の大きさに震撼するとともに、本格的な復興はこれからだという思いが込み上げてきます。応急仮設住宅への入居など、被災者の方々の生活は一応の落ちつきを取り戻しつつありますが、今後どのようなまちづくりを行っていくのか、大島が以前のように観光客でにぎわうような活気を取り戻せるのかなど、課題はまだ残っています。そこで、大島の復旧に向け、大島町と連携し、今後もさまざまな取り組みを強力に推し進めていく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
大規模災害に伴う被害を抑制するには、地域防災力の向上もまた不可欠です。発災直後の混乱の中、一刻も早く被害に遭われた方々を救助する必要がありますが、そのためには地域の防災力が重要となります。地域住民の避難誘導等を行う市区町村や、東京防災隣組等を通じた住民同士の助け合いが期待されていますが、中でも消防団員は日ごろから訓練を積んでおり、発災直後の救出救助活動のかなめとなります。我が党はこれまでも、人材確保や活動のための装備の充実など、消防団が活躍できる環境整備を進めてきましたが、来年度、改めて、我が党の強い要望に応え、特別区や多摩・島しょ地域における消防団の資機材の整備に対して予算が計上されました。こうした予算を活用しつつ、地域防災力の向上のため消防団活動の一層の強化に取り組んでいくべきと考えますが、都の所見を伺います。なお、ことしに入り、二度にわたる降雪によって東京の課題が浮き彫りになりました。特に、二月の十四日から十五日にかけての大雪は関東甲信地方の各地各所に被害をもたらし、多摩山間部では集落が孤立する事態や農業用施設が倒壊するなど、支援を要する事態も発生しました。都は、自衛隊への応援要請や消防庁職員の派遣など、地域のニーズを踏まえた迅速な対応を行ったところです。今後、被害状況の把握や国の動向も見きわめながら、必要な支援等の対策を講じていくよう求めておきます。
次に、今後の東京の都市づくりについて伺います。新たに発足したオリンピック・パラリンピック準備局を中心に東京大会への組織体制が整い、新年度からは施設整備が本格的に始まります。大会に向けた万全な準備はもちろんですが、都市づくりは六年後が到達点ではありません。大会を契機に東京が持続的に発展していくためには、大地震の脅威や少子高齢化の進行、都市間競争の激化などにも的確に対応した都市づくりが重要であり、その方向性を都民に示していくことも必要です。知事は選挙期間中、我が党議員とともに都内各地に足を運び、都市づくりの課題を肌で感じられたことと思います。そこで、今後の東京の都市づくりについて知事の基本的な考えを伺います。
次に、鉄道ネットワークの充実について伺います。鉄道は、豊かで快適な都市生活を支える基幹的かつ必須のインフラであり、今以上に鉄道ネットワークを充実させることは、これからの東京の都市づくりを進めていく上で非常に重要と考えます。現在、東京圏の鉄道整備については、長期的な展望に立ち、策定された運輸政策審議会答申第十八号を基本に、平成二十七年を目標年次として路線の整備が進む一方、答申に位置づけられながら未着手となっている路線も多く残っています。そこで、目標年次が近づく中、東京における鉄道ネットワークの充実に向けて、どのように取り組んでいくのか所見を伺います。
次に、無電柱化の推進について伺います。
無電柱化は東京の空を広くし、美しい都市景観を生み出すとともに、バリアフリー化にもつながり、災害時には電柱の倒壊による道路の閉塞を防ぐなど、防災、減災にとっても欠くことのできない重要な役割を担っています。政治、経済、文化の中心である首都東京を成熟した国際都市として、また、知事の公約である大災害に打ち勝つ都市としていくためには、これまでセンター・コア・エリア内を初め、多摩や区部においては主要駅周辺等で進められてきた無電柱化を、さらに加速させていく必要があります。
そこで、東京オリンピック・パラリンピック開催も踏まえ、今後、無電柱化事業にどのように取り組んでいくのか所見を伺います。
次に、首都高速道路の大規模更新について伺います。首都高速道路は、初めて京橋から芝浦までの四・五キロメートルが開通して以来、約五十年が経過いたしました。これまで総延長約三百キロメートルが整備され、首都圏経済を支える重要な都市インフラとして機能していますが、現在、施設の老朽化が課題となっています。
このような中、昨年十二月、首都高速道路株式会社は、一号羽田線や三号渋谷線などの区間について、大規模更新に取り組むとした計画を発表いたしました。将来にわたり首都高速道路の機能を維持していくには、早期の大規模更新が必要と考えますが、都の認識を伺います。
次に、臨海副都心の開発について伺います。近年、躍進が著しいシンガポールやソウルなどアジア諸都市との厳しい競争に東京が勝ち抜くためには、MICE、国際観光機能の充実による都市力の強化が不可欠であります。特に海外では、国際会議場などMICE施設と集客力の高い観光資源をあわせ持つ統合型リゾート開発を進めており、日本でも昨年十二月の臨時国会でIR法案が上程されました。ビジネスと観光の拠点へと成長した臨海副都心は、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場が多く配置され、今後ますます世界の人々が集い交流する町として、一層の発展が期待される重要な地域であります。臨海副都心の開発は、東京を世界で一番の都市へと牽引できる大きな核の一つであり、発展のためには交通アクセスの充実も重要な要素であります。今後の開発の意義と取り組みについて知事の所見を伺います。
次に、気候変動、エネルギー政策について伺います。近年、巨大台風の多発など世界的な異常気象が常態化しており、気候変動対策は待ったなしであります。また、世界有数の大都市東京が継続的に発展するためには、東日本大震災の教訓を踏まえ、都民、事業者の活動を支えるエネルギー需給の安定化を図ることが何よりも重要であると考えます。千三百万都民を抱える都は、都民、事業者を支えるという原点に立ち、地域に根差した施策に全力を挙げて展開する必要があります。あわせて、東京はエネルギーの大消費地として、電力供給の大部分を他県に依存していることから、供給地域への感謝を忘れることがあってはなりません。そして、率先して省エネ、節電に取り組み、その責務を果たすことが求められます。そこで、気候変動、エネルギー政策の推進に向けた知事の基本認識を伺います。
また、エネルギーの大部分を化石燃料に依存している我が国の次世代エネルギーとして、水素の利活用が注目されています。来年には燃料電池自動車の市場投入が予定されているなど、いよいよ水素社会の実現に向けた取り組みが始まろうとしています。国レベルでは、自民党本部が水素社会推進小委員会を設置したほか、政府も産学官から成る協議会を立ち上げ、今年度中を目途に水素社会の実現に向けたロードマップを策定するとしています。環境先進都市東京として、全国の自治体を牽引するためにも、都は水素社会への実現に向けて積極的な役割を果たすべきです。知事の見解を伺います。
都は、二〇二〇年までにエネルギー消費量を二〇〇〇年比で二〇%削減するという、都民、事業者にわかりやすい目標を掲げています。この目標達成に向けては、これまでの施策の成果を生かし、大規模事業所、中小規模事業所、家庭など部門ごとの特性に応じた、踏み込んだ取り組みが必要と考えます。特に、我が党が政策提言で指摘した、省エネポテンシャルが高いにもかかわらず対策が進んでいない中小規模事業所や、家庭部門のさらなる取り組みを促す施策が不可欠と考えます。
そこで、エネルギー消費量削減目標の達成に向けた来年度の都の具体的な取り組みについて伺います。また、下水道局は、年間約二十億立方メートルもの下水を処理する過程で、都内で電力使用量の一%以上のエネルギーを使用し、都内最大級のエネルギー消費者であります。今後、エネルギー対策をより積極的に進めていくべきと考えますが、取り組みについて伺います。
次に、東京の産業振興について伺います。アベノミクスにより我が国の経済の回復が着実に進む中、これからは東京の産業を支える数多くの中小企業に景気の好転が実感できる政策展開が重要と考えます。今、都政に求められているのは、中小企業の経営を守り、発展させ、そこで働く従業員の生活に安定と向上をもたらすことであります。これまで、我が党は中小企業の振興に向けてさまざまな提言を行い、政策の実現を図ってきた実績があります。中小企業の現場の声に誠実に耳を傾けて、日々の経営を下支えするとともに、会社の将来の発展に向けた道筋をつくり出していくことこそが、我々責任政党としての役割を果たすことであり、都もこうした責務を負っていると考えています。こうしたことを踏まえ、知事として東京の中小企業振興にどう取り組んでいくのか所見を伺います。
次に、中小企業の設備投資の活性化について伺います。現在の景気回復の動きをより確実なものにするためには、この機会を捉えて中小企業が積極的に設備投資を行い、売り上げを伸ばし、さらに事業を拡大するという好循環を生み出していくことが重要であります。国においては、設備投資を促すための税制措置などが講じられ、機械受注額が五年ぶりに高水準になるなど変化があらわれつつあります。その一方で、中小零細企業にとって設備の導入への負担は重く、都内中小企業の設備投資意欲は依然として低調であります。これまで我が党は、設備投資の活性化に向けて、中小企業をしっかりとサポートできる踏み込んだ施策の展開を提案してきましたが、その実現に向けどう取り組む考えか所見を伺います。
次に、創業者への支援について伺います。東京の経済の発展に向け、創業を促進し、将来の産業の担い手を生み出すことが重要です。国では、開業率を現在の五%から一〇%台に大幅に引き上げることを目標としています。都も国の成長戦略を踏まえつつ、創業の活性化に十分に力を入れていくべきです。我が党は、起業家の成長の段階や個別のニーズに応じた、きめの細かいサポートの重要性を強調してきました。また、女性や若者に加えて、会社を退職したシニア層が地域社会で起業する取り組みに、資金面からの後押しを行うような施策についても提案してきました。こうした内容を踏まえ、都は創業の促進にどのように取り組むのか見解を伺います。中小零細企業は、設備投資や新たな事業展開に伴い、多額の資金を必要とする一方で、日々の事業運営に必要な運転資金をしっかりと確保することが欠かせません。特に小零細の会社の多くは厳しい経営環境に直面しているだけに、資金繰りは切実な課題であります。昨年三月に新設した特別借換融資は、月々の返済負担を軽減しながら、経営改善に取り組む多くの小零細企業に利用されているとのことであります。こうした取り組みを一層後押しするため、さらに制度を拡充していくべきであります。また、資金調達の選択肢を広げるため、企業が保有する動産なども担保として活用して、資金を借り受けられる仕組みづくりにも取り組むべきであります。都は、さまざまなニーズに応えるための金融支援策をどのように強化していくのか見解を伺います。
次に、成長戦略について伺います。これまで長期にわたったデフレ状況は、ようやく改善の兆しを示しています。今こそ東京が成長に向けて、力強く躍動し、日本の再興を牽引していかなければなりません。そのためには、企業収益の回復を成長への投資に振り向けるとともに、個人消費の拡大へとつなげ、さらなる企業収益の向上に結びつけていくことが求められています。個人消費の拡大を実現させ、好循環をつくり出していくため、知事みずからがリーダーシップを発揮すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
次に、観光振興について伺います。我が国を訪れる外国人旅行者は一千万人を超え、東京への来訪者がこれまでにない高い水準となる中、現在の旅行者の数をより一層伸ばしていくための戦略的な取り組みは欠かせません。オリンピック・パラリンピックの開催決定という大きなチャンスを生かして、東京の魅力を見定めて海外に向けて力強く発信するとともに、さまざまな旅行者が快適に滞在できる環境を着実に整えて、旅行者誘致につなげていくべきであります。こうした取り組みは、東京が日本の玄関口としての機能を果たすものと考えます。都は観光振興をどのように展開していく考えであるのか所見を伺います。
次に、農業の振興について伺います。都市農業は、新鮮な農産物の供給に加え、その生産基盤である農地が緑地、オープンスペースとして都民生活に潤いと安らぎをもたらしています。しかし、農産物価格の低迷、生産コストの上昇による収益の悪化など、農業経営は年々厳しさを増しており、相続時の高額な税負担も相まって、この十年間で都市農地は二割近くも減少しています。こうした中、これまで我が党は、大消費地を抱える優位性を生かした農業経営の展開など、多くの施策を提案して実現するとともに、国に対しても、都市の中でも存続していけるよう、相続税等の制度改善の働きかけを行ってきました。都市農業の振興にどう取り組んでいかれるのか、知事の所見を伺います。
次に、雇用就業対策について伺います。東京が着実に発展するためには、意欲ある若者が数多くの中小企業でその持てる能力を十分に発揮することが重要であります。また、子育てなどで離職した女性が仕事に戻り、活躍できる仕組みをつくり上げることも欠かせません。さらに、元気のある高齢者が地域においてその経験や能力などに応じて就業し、活躍できる機会の確保も求められています。国では、若者や女性、高齢者等の活躍を推進する全員参加の社会を成長戦略の重要な柱として位置づけています。都としても、こうした方々の就業を後押しするため、より踏み込んだ方策を打ち出すべきと考えます。所見を伺います。
次に、障害者の就業促進について伺います。障害者が安心して暮らせる社会を実現するためには、生きがいを持って働くことができるよう支援することが重要であります。
昨年四月の、法定雇用率引き上げなどを背景に、都内企業では障害者の雇用を広げる動きが進んできています。この機を捉え、より多くの障害者が就職し、職場にしっかりと定着して仕事を続けられるように後押ししていくことが求められています。また、精神障害者の就労意欲が高まる中、職場環境への適応が難しいといった課題もあることから、精神障害者の雇用の促進に向け、企業の取り組みを支援することも必要であります。都として、円滑な職場定着や精神障害者の雇用など、障害者の就業促進に向け、どのように取り組むのか伺います。
次に、多摩地域に関する基本的な認識について伺います。東京都はこれまで、多摩地域という地域を区切って各種振興策を進めてきましたが、まだまだ課題が残されています。多摩のさらなる発展のためには、二十三区と多摩という垣根を超えた大きな視点が必要であります。二十三区と多摩地域では行財政制度の違いはあるものの、多摩地域という、東京から切り離された特別な地域があるわけではありません。それぞれの地域が抱える課題に違いはありますが、二十三区二十六市五町八村が全て一体となった都市が首都東京であります。その意味で、都が取り組むべき市区町村の振興策は、地域間格差の解消といった視点にとどまることなく、東京全体の発展を遂げるという視点に立って進めていくべきであります。知事には、こうした視点を持って都政のかじ取りをしていただくことが重要であり、そのことが東京全体の振興、ひいては市区町村全体の振興へとつながっていくと確信しております。都は、昨年三月に策定した、新たな多摩のビジョンの中で、人口減少局面の到来や経済活動の縮小など、多摩地域が今後直面する状況を明らかにいたしました。ある意味で、都内全域に共通する課題ともいえるこうした厳しい状況を、多摩地域が乗り越え、さらなる発展を遂げていけば、必ずや東京を世界で一番の都市へと押し上げることができます。そこで、多摩地域をどのように捉え、地域の課題解決やさらなる施策展開を図っていくのか、知事の考えを伺います。
次に、多摩地域のインフラ整備について伺います。多摩地域は四百万人を超える人口を擁しており、魅力にあふれ、活力に満ちた町を目指すためには、地域が有する多様な特性を生かし、多摩地域のポテンシャルを最大限に引き出していくことが重要であります。今回の選挙期間中、舛添知事は多摩地域に何度も足を運ばれ、多摩地域は交通体系の整備がおくれていると強く訴えました。多摩地域のポテンシャルを最大限に引き出すためには、道路整備とともに、多摩都市モノレール延伸といった鉄軌道ネットワークを一体となって進めていくことが喫緊の課題であります。そこで、多摩地域の交通インフラ整備について都の見解を伺います。
次に、都民生活の安全・安心を支える取り組みについて何点か伺います。初めに、安定給水の確保についてです。
水道は、代替のない社会インフラであり、都は、都議会自民党とともに、世界に誇れる最高水準の水道をつくり上げてきました。しかし、首都直下地震への備えや浄水場の更新など、新たな課題が山積しています。首都東京の都市機能を確保、維持するためには、こうした課題に早急に対応し、強靭な水道インフラを整備していく必要があります。そこで、首都東京の安定給水の確保を今後どのように進めていくのか、具体的に伺います。また、我が国の水道事業を牽引する役割を担う東京水道は、盤石な水道システムを構築することで、一層深刻な状況にある全国の事業体に対して、その範を示していくべきと考えますが、あわせて伺います。
次に、都営地下鉄のサービス向上について伺います。東京の鉄道は、稠密なネットワークを形成し、正確かつ高密度な運行が行われるなど、信頼性が高い輸送機関であります。中でも地下鉄は、都営地下鉄と東京メトロを合わせると十三路線、三百四キロメートルに上り、一日に八百五十万人を超える利用者がいるなど、首都東京の重要な公共交通です。加えて、少子高齢化の急速な進行、国際化の進展やオリンピック・パラリンピック大会開催も見据え、安全の確保はもとより、ユニバーサルデザインのさらなる推進が求められています。そこで、都営地下鉄は、東京メトロとも連携し、これまでにも増して利用者サービスの向上に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
次に、豊洲新市場の整備について伺います。築地市場の豊洲移転については、市場業界団体から提出された移転要望を重く受けとめるとともに、施設の老朽化が著しい築地市場では、都民の食生活の安定に影響を及ぼしかねない状況に鑑み、我が党はこの一大事業の歯車を回し続けてまいりました。豊洲新市場については、土壌汚染対策がおおむね完了し、主要施設の建築工事についても、再入札の結果、先月、契約を締結できたことにより、ようやく具体的な姿が見えてきたところであります。我が党は、円滑かつ早期の移転に向け、引き続き市場関係者の声に真摯に耳を傾けながら取り組みますが、豊洲新市場の整備に向けた知事の所見を伺います。
次に、子供の安全対策について伺います。都内の刑法犯認知件数は十一年連続で減少し、東京の治安は改善傾向にあることは間違いありません。しかし、昨年六月に、練馬区の路上で下校途中の小学生が刃物を持った男にいきなり切りつけられる事件が起こったほか、十二月には、武蔵野市の住宅街で小学生が見知らぬ男に連れ去られそうになる事件が発生するなど、犯罪弱者ともいわれる子供の安全の確保は万全だとはいえない状況であります。我が党は、かねてから、地域に設置される防犯カメラの有効性や重要性を提言してきたところでありますが、都が今回計上している通学路に設置する防犯カメラに対する支援は、子供の安全対策に極めて有益であると考えます。
そこで、この事業の意義や効果、さらには今後の展開について、都はどのように考えているのか伺います。
次に、福祉、保健、医療施策について伺います。東京は、これまで経験したことがないスピードで高齢化が進展し、団塊の世代が後期高齢者となる二〇二五年には、高齢者人口は三百三十二万人に増加すると推計されており、都民の四人に一人が高齢者となる見込みであります。また、結婚や子育てに関する価値観の変化などを背景として、未婚、晩婚化等による少子化も進んでいます。都は、多様な手法を活用しながら、保育所や特別養護老人ホームの整備に努めていますが、保育所の待機児童は約八千人で推移し、特別養護老人ホームも入居待ちの状況が続いています。就業環境の変化や近隣関係の希薄化などが進む中で、それぞれのライフステージに合わせたサービス基盤の拡充や、そのサービスを支える人材確保などの課題にも的確に対応していく必要があります。知事は、今回の知事選における公約で、安心、希望、安定の社会保障の実現に取り組んでいくと宣言され、今回の同時補正予算では、福祉分野に力点を置いて編成されています。そこで、都民が安心でき、希望が持てる東京の実現を見据え、今後の福祉、保健、医療施策に対する知事の認識について所見を伺います。
次に、知事が選挙期間中に発言されていた、福祉施設整備促進のための土地活用について伺います。都有地、国有地などの公有地の活用についてですが、これまでも福祉インフラの整備を進めてきた中にあって、都心部では遊休地も少なく、土地の活用といっても困難な部分もあります。一層の推進のためには、建てかえや再開発に伴う創出用地や、高層ビルの低層フロアなどを積極的に活用していくことが必要であります。そこで、福祉施設の整備を進めるための土地活用について、どのように進めようと考えているのか、知事の所見を伺います。
次に、在宅療養の推進に向けた都の取り組みについて伺います。高齢化の進展に伴う医療需要の増加に適切に対応し、二十四時間三百六十五日、いつでも誰もが必要とする医療を受けられ、地域で安心して暮らせる社会を実現するためには、医療と介護の連携を強化し、在宅療養を推進していくことが必要であります。また、救急医療を確保する観点からも、急性期を脱した患者の在宅への円滑な移行を進めていくことも重要であります。そこで、在宅療養の推進に向けた都の取り組みについて伺います。
また、急性期の医療に取り組んでいる都立病院においても、患者の在宅療養への円滑な移行は重要な課題です。都立病院改革推進プランにおいて、患者支援センターを設置し、円滑な転院、退院、在宅移行に向けた相談支援機能の充実を図るとしていますが、同センターで在宅療養への移行にどのように取り組むのか伺います。さらに、患者支援センターは、在宅療養支援にとどまらず、患者、家族に対する総合的なサポートを行うとのことですが、その具体的機能と今後のスケジュールについて伺います。後期高齢者医療制度は、高齢者医療を社会全体で支える観点から、一割を保険料、九割を公費及び現役世代からの支援金で賄う仕組みとなっています。平成二十二、そして平成二十三年度の保険料改定に当たって、都は、保険料の増加を抑制するため、財政安定化基金を活用できるようにした国の方針を踏まえ、この基金を活用しました。昨年八月の社会保障制度改革国民会議では、現行制度を基本として必要な改善を行っていくこととされ、現在、国においては、現役世代からの支援金の見直しや保険料に係る低所得者の負担の軽減等が検討されています。こうした中、今般、保険料改定の時期を迎えますが、都はどのように対応するのか伺います。
次に、高齢者の住まいの整備について伺います。これまで経験したことのない超高齢化社会への対応が求められる中、我が党は、政策推進総本部での検討を重ね、昨年十二月、世界で一番の都市東京を実現するための政策提言を行い、特別養護老人ホームの定員を拡充するため、市区町村が連携して整備を図ることなどを盛り込みました。今後、さまざまな手法を用いて、高齢者が安心して暮らすことのできる環境整備をさらに促進させる必要がありますが、都の考えを伺います。
次に、障害者施策について伺います。国は、昨年九月、平成二十五年度からおおむね五年間を対象とする第三次障害者基本計画を策定いたしました。都も、来年度には新たな計画の策定に取り組むと聞いております。我が党はこれまで、グループホーム等の地域生活基盤の整備促進、入所施設から地域生活への移行支援、障害者が地域で自立した生活をするための就労支援、さらには障害者総合支援法の施行などの制度改正への的確な対応を求め、都もそれに応えてきました。今後、オリンピック・パラリンピックの開催を踏まえ、まちづくり等も含めた取り組みをさらに進めていくことが求められています。東京都は、引き続き障害者施策の充実を着実に進めるとともに、新たに計画を策定する際には、二〇二〇年を見据えたものとすべきと考えますが、所見を伺います。
次に、子育て支援策について伺います。現在の社会環境においては、子育てに不安や孤立感を覚える家庭も少なくありません。また、女性の社会進出や人口流入に伴う就学前児童人口の増加のため保育ニーズが増大し、依然として多くの待機児童が生じており、仕事と子育てを両立できる環境の整備を加速することが求められております。都は、こうしたことを踏まえ、今般の補正予算において新たに東京子育て応援ファンドを創設し、都民、企業と一体となって社会全体での子育て支援を推進していくこととしています。今後、全ての人が安心して子供を産み育てられる社会を目指して、妊娠、出産、育児と切れ目のない支援にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
次に、世界に通用する人材の育成に向けた教育の取り組みについて伺います。まず、私学振興について伺います。
私立学校は、建学の精神と独自の教育理念に基づき、子供たちの個性に応じた教育を展開し、多くの優秀な人材を輩出しています。特に東京においては、高等学校の生徒の約六割、幼稚園に至っては園児の九割以上が私立学校に通学しており、東京の公教育に果たす私立学校の役割は極めて大きくなっております。
こうしたことから、我が党は、学校運営に対する経営費補助の充実に力を尽くすとともに、保護者負担の軽減や校舎の耐震化補助の拡大、私立高校生に対する海外留学支援制度の創設など、学校現場の先生方や保護者のご意見を伺いながら、私学振興に幅広く、また、きめ細かく取り組んできました。
グローバル化が進展する社会での活躍を夢見る若者を育てていくためには、時代の動きを捉え、先進的な教育に果敢に取り組む東京の私立学校の振興により一層力を注ぐべきと考えますが、私学振興に対する知事の基本的考え方を伺います。
一方、保護者負担の軽減について国は、私立高校生に対して一律に支給してきた就学支援金制度に来年度から所得制限を設け、その財源で低所得世帯への支援の拡充を図るなどの見直しを行うことを決めました。国の見直しを受けた特別奨学金の対応について、都は、昨年の第四回都議会定例会で我が党での代表質問に対し、国が示す制度変更の詳細を見きわめる旨の答弁がありましたが、具体的にどのように対応するのか伺います。
次に、世界で活躍できる志のある高校生の育成について伺います。二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの際には、世界各国から多くの外国人を迎えることになります。東京がグローバル社会の舞台そのものとなり、東京に住む誰にとっても世界を直接感じるとともに、おもてなしの心を体現する絶好の機会となります。特に東京の高校生に期待したいことは、オリンピック・パラリンピックを契機に、広く世界に目を向けるとともに、自分が社会の一員であることを認識し、どのような貢献ができるかを考え、実際に行動に移すことです。都立高校生の広く社会に貢献する志と行動力を育成することが重要であると考えますが、都教育委員会の取り組みを伺います。世界から集まる外国人に対し、おもてなしの心を行動であらわすためには、人や社会の役に立とうという意欲を持つとともに、多様な文化を理解した上で、円滑に意思の疎通を図る能力が必要であります。ボランティア活動などさまざまな場面で主役となる若者の英語力をさらに高めていくために、高校における英語教育を一層充実させていくことが重要であると考えますが、今後どのような取り組みを行っていくのか伺います。
次に、公立小中学校の冷房化について伺います。近年の夏の異常な暑さにより、子供たちが学習に集中できる限界を超える状況となったことから、都は、我が党の求めに応じ、平成二十二年度から普通教室の冷房化について、市町村への都独自の財政支援を実施してきました。今年度末で公立小中学校の全ての普通教室が冷房化されることになると聞いております。しかしながら、音楽教室や視聴覚教室などの特別教室についても、子供たちの学習環境の改善が求められております。市区町村への冷房化財政支援の対象を、こうした特別教室まで拡大する予算案を提案したことは評価をさせていただきます。特別教室の冷房化について、市区町村への財政的支援を都教育委員会としてどのような考え方で行っていくのか、見解を伺います。
次に、スポーツ環境整備について伺います。昨年のスポーツ祭東京二〇一三は、選手、大会関係者、観客を合わせて百二十万人が参加し、大きな成果を上げました。地域のスポーツ関係者、町会、自治会など多くの都民が協力して開催されたこの大会を通じ、都民の誰もが身近な地域でスポーツに親しむ機運が醸成されました。この機運を今後もさらに確かなものとするためには、都が市区町村との連携を一層深め、ソフト、ハード両面からの施策を多面的に展開し、スポーツ環境の充実に取り組む必要があります。
昨年の第四回都議会定例会での我が党の代表質問に対し、都は、都民のスポーツ実施率を七〇%とすることを見据え、身近なスポーツ環境を整備するための新たな方策を検討すると答弁いたしました。そこで、具体的にどのような取り組みを行うのか伺います。
次に、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会について伺います。第二次安倍政権が成立して一年余り、アベノミクスにより放たれた三本の矢によって、我が国は長きにわたるデフレから脱し、力強い成長軌道を取り戻しつつあります。二〇二〇年大会が東京に決定したことによって、日本全体が一斉に明るく元気になったことが、日本の復活を大きく後押ししています。一九六四年の東京オリンピックは、戦後の復興を世界にアピールするものでありましたが、二〇二〇年大会は、東日本大震災からの復興をなし遂げ、成長の自信を取り戻した日本の姿を力強く発信する舞台となるに違いありません。八年越しに及んだ招致活動は、都民、国民の七割を超える支持にも後押しされ、招致活動もオールジャパンの体制で進められました。先月発表された大会組織委員会の会長には、この体制の確立に尽力された森元総理が就任いたしました。知事には大会の成功に向け、この組織委員会と一致協力して取り組んでいただきたいと思います。我が党も協力を惜しむことなく、二〇二〇年大会が東京を世界で一番の都市とする最大の好機と捉え、全力を尽くしてまいります。知事は先日のソチ・オリンピック大会を視察され、さまざまな成果を得たことと思います。そこで、知事のオリンピック・パラリンピック競技大会に対する思いとともに、その先の東京の姿を見据え、大会の成功に向けて今後どのように取り組むのか、決意を伺います。先ほども申し上げましたが、二〇二〇年大会を成功に導くためには、招致に引き続きオールジャパン体制を堅持しながら、大会関係者と一層の連携協力が欠かせません。国や市区町村、日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会などとの関係強化に加え、今後は大会運営を担う大会組織委員会とともに精力的に準備に取り組んでいく必要があります。都はこの新しく設立された大会組織委員会と今後どのように連携し、役割分担しながら大会準備を進めていくのか伺います。大会開催まであと六年、我々に与えられた六年間という時間は、長いようでいて実はあっという間の出来事だと思います。都は十もの新設会場を建設し、既存施設の増改修も行わなければなりません。昨今の建設物価の高騰や人材不足などで、全国的に入札不調の事例なども発生しています。だからといって、我々におくれは許されません。二〇二〇年に向け、世界中が日本を、そして東京を注視しているのです。都は一瞬たりとも無駄にすることなく、計画的、効率的に施設整備を推進していかなければなりません。これに加え、これから整備される新たなスポーツ施設は大会後も都民にとって貴重な財産となり、未来の子供たちに向けたすばらしい贈り物となる必要があります。そこで、今後、都は施設整備の課題にどう対応し、計画を進めていくのか伺います。
次に、競技力向上施策について伺います。二〇二〇年大会の開催都市である東京が今後大いに盛り上がっていくためには、地元東京の選手が数多くオリンピックの舞台で活躍できるような取り組みが必要と考えます。都は、我が党の強い要請を受け、これまで東京国体に向けた競技力向上施策を推進してきました。その結果、昨年の東京国体では他を圧倒し、天皇杯、皇后杯を獲得することができました。都が地区体育協会や競技団体と協働して取り組んできた競技力向上施策を大いに評価するものであります。
二〇二〇年の東京オリンピックという新たな目標ができた今、都は開催都市として、東京育ちの選手が東京オリンピックで活躍できるよう、競技力向上施策をより強力に実施していくべきであると考えますが、都の見解を伺います。オリンピック・パラリンピックという世界最高峰の大会は、開催期間中だけのイベントだけにとどまりません。本番で最高のパフォーマンスを発揮するため、各国選手団は大会前、時差を調整したり、気候になれたりするため、事前合宿を行うものと思います。二〇〇八年の北京大会の際は、中国だけでなく日本や韓国で合宿を行うチームもあり、福岡や大阪など西日本を中心に幾つもの都市が合宿を受け入れたと聞いています。二〇二〇年大会では当然、開催国である日本が事前合宿の中心となるはずであります。大会に向け闘志と緊張を高めるアスリートに最良の練習環境を提供し、日本ならではの心遣いができれば、世界中のオリンピアン、パラリンピアンの心の中に日本という国の記憶が残るはずです。受け入れを行った地域の人々にとっても、一流のアスリートとの交流は貴重な経験と思い出になることは疑いありません。そこで、二〇二〇年大会の事前合宿を多摩地域を初めとする都内全域や被災地など全国に積極的に誘致すべきと考えますが、都の見解を伺います。
次に、オリンピック文化プログラムについて伺います。東京には、伝統芸能から革新的技術に至るまで、多様な文化が集積しています。東京が世界で一番の都市となるためには、伝統文化を初めとした芸術活動の充実や都立文化施設の魅力向上などにより、芸術文化の面でも国際的評価を高めていくことが必要であります。そのためには、二〇二〇年東京大会を絶好の機会と捉え、これまでにない先進的な文化プログラムをつくり、東京の文化を世界に発信していくことが重要であると考えますが、知事の見解を伺います。東京の文化の発信力を高め、その魅力を生かした文化プログラムをつくり上げていくには国内外の英知を結集することが必要であり、また、機運醸成を進めていくことも重要であります。東京大会の文化プログラムの具体化に向けて、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
以上、都政の重要課題について質問をしてまいりました。これまで申し述べたように、目の前には実に多くの課題が山積しております。もとより、関東大震災から復興に当たった後藤新平が代表されるように、長い歴史の中で、都政の先人たちは幾多の困難を乗り越えただけではなくて、ピンチをチャンスに変えてきました。転換期には先頭に立って汗を流せ、これこそ先人たちからの教訓であり、我々の揺るぎない信念であります。我が党は真っすぐ将来を見据え、都民の皆様に約束したことを一つ一つ形にし、都政を前進させてまいります。舛添知事も、今回都民から四年という時間を与えられたわけですが、じっくりと腰を据えて、さりとて片時も無駄にすることなく政策の実現に努めていただきたいと思います。政策が実現することで、激動の時代に新しい道が切り開かれるに違いありません。知事は施政方針の最後で、都民の大きな負託に応えるため、たとえ困難な道であっても前へ進む、その評価は歴史の審判に委ねる、そうおっしゃいました。舛添知事、ぜひ我々とともに、一千三百万都民の幸せのため、かけがえのない首都東京を世界で一番の都市へと飛躍させようではありませんか。そのことこそがまさに都政の新たな歴史の一ページとして深く刻まれることと確信しております。我々都議会自由民主党は、責任政党として、これまで以上に力強く都政をリードしていくことを改めてお誓いを申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕
◯知事(舛添要一君) 吉原修議員の代表質問にお答え申し上げます。
まず、都政運営の基本姿勢についてでありますが、今回の選挙では都内をくまなく回り、都民一人一人の声に直接耳を傾けることができました。都民の皆様の負託に応えるため、知事は、東京の将来を見据え、まずは大きな方向づけをしなければならない。そのために、地をはうアリの目をもってつぶさに現場を見詰めるとともに、空を飛ぶ鳥の目で東京全体を俯瞰しつつ、問題の本質を見つけ出すことが必要であると考えております。そして課題ごとに到達すべき目標を設定し、実現に向けて工程表をつくっていくとともに、十六万五千人の都職員の力を最大限引き出しながら政策を具体化し、実行していきたいと思っております。また、政府としっかり連携協力しながら、時には注文すべきは注文して、東京から政策を発信し、日本全体を力強く牽引していきたいと思っております。こうした都政の新たなありようと東京の将来像、グランドデザインを明らかにするため、年内に新しいビジョンを策定したいと考えております。都民の安心・安全、少子高齢化の問題、そしてオリンピック・パラリンピックの成功など、公約に掲げました政策に精力的に取り組み、世界一の都市東京を実現したいと考えております。都民のためによい成果を上げることを第一に考え、都議会の皆様方と真摯で建設的な議論を重ねていく所存でございます。どうかお力添えをお願いしたいと思います。
次に、財政運営についてでございますが、都財政の役割は都民の安全・安心の確保や都市の活力の向上など、東京が抱えるさまざまな課題の解決に向けた取り組みを継続的かつ安定的に実施できるよう、財政面からしっかり支えていくことにあると思います。歳入の根幹をなす都税収入は景気変動の影響を受けやすく、また、都は地方交付税の不交付団体であることから、他の自治体以上に自立的な財政運営を行っていかなければならないと考えております。このため、事業評価などの自己改革の取り組みを通じ、施策の効率性や実効性を高めていくとともに、中長期的な視点に立って基金や都債を活用するなど、堅実な財政のかじ取りを行っていく所存であります。こうした取り組みによりまして、必要な施策には機動的かつ集中的に財源を投入し得る強固な財政基盤を堅持しながら、世界一の都市東京の実現に向け全力で取り組んでまいりたいと思っております。
続きまして、平成二十六年度予算についてでございますが、もとより限られた時間の中での予算編成でありましたが、二カ月にも及ぶ都政の空白を埋め、公約の実現に向けた歩みを着実に進めていかなければならないという強い思いを持って査定に臨みました。こうした考えのもと、速やかに新しいビジョンの策定に取りかかることを指示するとともに、都民と約束しました施策のうち、新たな家庭用防災マニュアルの作成や保育所の整備費補助の拡充、救急医療の充実強化、再生可能エネルギーのさらなる普及に向けたファンドの創設など、すぐに始められるものを予算に追加することにいたしました。今回新たにまきました種をこれから大きく育て上げるとともに、今後とも必要な施策については機を逸することなく、積極的に推進していく所存でございます。
次に、アジア大都市ネットワーク21の今後の進め方についてでございますが、外交は国の専管事項でありますが、都市には都市だからこそできる外交があります。二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック開催を見据え、これまで培ってきた世界の都市とのつながりを大切にし、結びつきをより一層強めていきたいと思っております。中でも世界人口の六割を占め経済成長も著しいアジアは、東京、日本にとって極めて重要な地域であります。そのアジアの首都や大都市がアジア大都市ネットワーク21に参加して共通する課題の解決を図り、ひいてはアジア社会、経済の発展を目指すことは大変有意義であると考えております。アジア大都市ネットワーク21は、これまで感染症対策や廃棄物処理など幅広い分野にわたり、実務レベルの協力や研究を通じて具体的な成果を上げてまいりました。また、昨年には新たな共同事業として経済交流促進のプラットフォームが創設され、さらなる充実に取り組んでおります。今後とも、このアジア大都市ネットワーク21を一層活性化させることにより、会員都市との結束をより強固なものにし、東京、日本、そしてアジアの発展に尽力したいと考えております。
続きまして、東京水道の国際展開についてでございますが、東京では蛇口をひねれば容易に安全でおいしい水道水を得ることができますが、世界ではいまだ八億人に及ぶ人々が安全な水を手にできていない状況であります。また、アジアの途上国では近年都市化が著しく進み、水質の悪化や水不足が生じており、日本の水道技術が高く求められております。現在、タイと台湾において日本企業とともにパイロット事業を展開中でございますが、さらに、ミャンマーの最大都市であるヤンゴン市を視野に、無収水対策事業を手がけていきたいと考えております。国際展開を一層推進していくためには、漏水など収入に結びつかない無収水の率三%などのすぐれた東京の技術や日本企業の専門分野における技術だけでなく、相手国からの信頼や確かな情報を得るとともに、優良な資金が必要であります。今後さまざまな機会を捉えて東京の技術のすばらしさを発信するとともに、国に対して戦略的なODA改革を迫っていきたいと思っております。東京のすぐれた技術を駆使して途上国における水事情の改善を図るとともに、日本企業のビジネス支援を行うことによって、経済の活性化につなげていきたいと考えております。
続きまして、国家戦略特区についての基本姿勢についてでございますが、東京は国際的な都市間競争に勝ち抜き、今後も日本経済を牽引し続けていかなければなりません。こうした観点から、都は新しい成長の原資となる海外の資本や人材を呼び込む国際的ビジネス環境の整備を進めてきたところであります。東京都として目指す国家戦略特区においては、これまでの外国企業を対象とした取り組みに加え、都内中小企業と外国企業とが共同で行う新規創業や、世界進出を目指すベンチャー企業の立ち上げの支援に取り組んでいくことが必要であり、そのための具体的方策についてさらに検討を深め、充実させていきたいと考えております。国家戦略特区の指定を確実なものとし、医療を初めとして成長が期待できる分野で新しいビジネスが次々と生まれるよう改革を進めてまいります。今後とも、安倍政権と軌を一にして東京と日本の経済の活性化を推進してまいります。
次に、東京港の経営についてでありますが、首都東京から日本の経済再生を牽引するため、物流の円滑化、効率化は重要な課題であります。東京港は日本一のコンテナポートとして東日本の産業振興に寄与し、また、首都圏の生活を支えるなど、我が国の経済成長に重要な役割を果たしており、都はこれまで長年にわたり、東京港の発展に向け、港湾関係者と一体となって取り組んでまいりました。今後、都は東京港の機能をさらに充実強化していくとともに、川崎、横浜の両港と緊密に連携し、京浜港として釜山港や上海港との熾烈な国際競争に打ち勝っていかなければなりません。そのためには、今後も引き続き現場の実態を熟知した自治体が現場の声を十分に聞きながら、責任を持って港湾の経営を担っていく仕組みが必要であり、港湾運営会社を指導するような国の出資は到底容認することはできません。国際競争力強化策を実のあるものとし、日本の成長戦略を確かなものとしていくため、都が責任を持って東京港の経営を担ってまいります。続きまして、海外向け広報の導入についてでございますが、私が公約に掲げたように、東京が世界一の都市になるためには、東京の都市としての魅力や強みを広く海外からも認められる必要があります。世界の都市ランキングを見ても、欧米都市が安定した評価を得、アジアの大都市が経済成長を急速に遂げるなど、東京は激しい都市間競争にさらされておりますが、東京はこれらの都市を上回るポテンシャルと可能性を十分有していると考えております。東京の評価を向上させていくには、ロンドンがオリンピックを契機に文化の魅力を世界に向けて強力にアピールし一位に躍り出たように、海外に向けた情報発信が不可欠であります。このため、これまで取り組んでまいりました従来型の行政広報の手法を大胆に転換し、新たに海外向けの都市広報に今すぐ着手したいと思っております。都市広報を展開するに当たりましては、何よりもまず海外の人が興味を持つ東京の特性を具体的に紹介していくことが必要であります。例えば、治安のよさや交通機関の正確さで代表される東京の世界に類を見ない安定した都市運営は、社会資本の整備や経済成長といった側面にとどまることなく、高度な技術力と日本人の特性であります高い規範意識やホスピタリティーが一体となることで実現されております。今後このような東京ならではの強みを捉え、海外のより多くの人々に発信していきたいと思っております。また、外国人目線での情報発信手法として、海外からの記者を招聘し、東京の魅力を自国のメディアやSNSなどで紹介していきたいと思います。こうした取り組みに当たりましては、インターネットを駆使した最新の広報手法を最大限活用していくとともに、海外メディアや東京に精通した在住外国人、都市政策の専門家などの知見を活用し、国際感覚にあふれた情報発信を効果的に行っていきます。二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会の開催が決定し、本格的な準備をスタートする今こそが海外発信の絶好の機会であり、この新しい都市広報に全力で取り組んでいく所存であります。続きまして、道府県や政令市との広域的な連携についてでありますが、都道府県の区域を越えて社会、経済活動が行われている現代社会におきましては、課題を共有する自治体同士が連携し、その解決に向け共同で取り組むことが重要であります。例えば首都直下地震への備えや環境問題への対策などは、東京だけで実現できるものではありません。また、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを史上最高の大会とするためには、九都県市や被災地を初め、日本全体で取り組んでいくことが必要であり、これまで以上に他の道府県や政令市との連携を深め、力を合わせていくつもりであります。日本を変革していくためには、住民とじかに接している自治体がそれぞれ政策を競って切磋琢磨し、よいものは互いに積極的に取り入れていかなければなりません。私は日本の首都である東京の長として、自治体同士がしっかりと手を携えていけるように尽力してまいります。
次に、さまざまな危機への対応についてでありますが、東京を世界一の都市にするためには、大地震などの備えに万全を期すなど危機管理が最大の課題の一つであります。
二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催も見据え、防災上重要な幹線道路の整備や建物の耐震化、木造住宅密集地域の改善、津波、豪雨対策など、さまざまな防災対策に国や周辺県市とも連携しながら、スピード感を持って積極的に取り組みます また、私は厚生労働大臣時代に新型インフルエンザというそれまで前例のない脅威に遭遇いたしましたが、迅速な情報提供や対策を実行するなど、みずから率先し、指示し、対応いたしました。危機はさまざまな姿を示し、また、その姿が時とともに変化する。危機管理において重要なのは、現場の実情に即した柔軟な対策を講じ、あわせて情報公開を積極的に行うことであります。東京が危機にさらされた際には、この二つを行動原理に、私自身が陣頭指揮をとって都知事として都庁の持つ組織を結集し、都民の生命と財産を守るために全力で取り組んでまいります。今後の東京の都市づくりについてでありますが、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催は、世界最大のスポーツの祭典を通じて、その舞台となる成熟した都市東京の魅力を世界に発信していく絶好の機会であります。史上最高の大会の実現に向けて着実に準備を進めながら、その後も見据えた都市づくりを積極的に展開していく必要があります。
羽田空港の機能強化や国家戦略特区とも連携した都市再生を一層推進し、東京の経済活力を高めていくとともに、緊急輸送道路の沿道にある建物の耐震化や木造住宅密集地域の改善などにより、大災害にも打ち勝つ都市を構築してまいります。また、公共交通の利便性を向上させるとともに、駅などを中心に、医療、福祉、教育などの日常生活を支える機能を集約し、バリアフリー化も徹底することにより、誰もが暮らしやすい町へと再編してまいります。こうした取り組みを全力を挙げて進めていくことにより、世界一安全・安心で、日本経済を機関車として、さらに力強く牽引する都市へと東京をつくりかえてまいります。続きまして、今後の臨海副都心開発の意義と取り組みについてでございますが、臨海副都心は、世界中から人、物、情報が集まるMICE、国際観光機能が既に一定程度集積し、また都心に残された数少ない開発用地も有しております。今後さらなる取り組みにより、東京の競争力強化と日本の経済成長を牽引する国際的な戦略拠点に発展可能であります。東京発の日本経済復活のためには、東京オリンピック・パラリンピックの成功という目標に向けて、個人も都市も国家も団結、努力し、進歩した東京の姿を発信することが必要であり、臨海副都心はそのための重要な舞台でもあります。そこで、オリンピック・パラリンピック関連施設の整備を着実に進めつつ、大型クルーズ客船ふ頭の新設、バスや水上交通など交通アクセスの充実、新たな観光資源の誘致など段階的な開発を進め、IRも視野に入れて、世界一の魅力を持つMICE、国際観光拠点へと発展させてまいります。
続きまして、気候変動、エネルギー政策の推進についてでございますが、東京は、日本の首都、経済の中心として都市活動を支える電力、エネルギーの供給を他県に大きく依存しており、そうした地域への感謝の念を忘れてはならないと思います。気候変動の危機を回避するためにも、実効性あるエネルギー対策を着実に推進することは大消費地としての責務であると認識しております。そこで、都民、事業者の皆さんに一層の省エネ、節電を促すとともに、再生可能エネルギーを初めとする分散型エネルギー源を確保するなど、エネルギー需給両面にわたって、地域に根差した具体的で効果的な取り組みを強化してまいります。再生可能エネルギーの利用拡大につきましては、その第一歩として官民連携再生可能エネルギーファンドを創設することにしましたが、こうした取り組みを契機として、民間の資金力を活用するとともに、新たな技術の研究開発を推進するなど、我が国の英知を結集してさらなる普及を目指してまいります。今後、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本の誇る環境技術を活用しながら、都市のエネルギー利用効率を最大限に高め、世界一の環境先進都市を実現していく所存であります。
次に、水素社会の実現についてでございますが、水素エネルギーは、利用の段階ではCO2を一切排出しないため、水を分解して大量に水素を製造するシステムが実用化されれば低炭素社会の切り札となります。また、火力発電などさまざまな用途に活用できるため、化石燃料にかわり得る次世代エネルギーとしてエネルギー構造の変革にもつながります。さらに、貯蔵タンクや燃料電池本体の製造を初め、関連する産業分野の裾野が広く、水素エネルギーの普及による経済波及効果は極めて大きいものと期待されております。現在、家庭用燃料電池分野での開発が先行しており、加えて、来年には国内自動車メーカーから燃料電池車が世界に先駆け市場へ本格投入されるなど、我が国の技術が世界をリードしております。まさに今、国を挙げて水素エネルギーの普及に動いていく時期に来ていると思います。二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて我が国の高い技術力を世界に印象づけていくためにも、都として来年度に新たな戦略会議を設置し、産学官の英知を結集することで、水素社会の実現に向けて率先して取り組んでまいります。
続きまして、東京の中小企業振興についてでございますが、東京には世界有数の技術力を持つ中小企業が集積しており、都内企業の九九%を占める中小企業こそが東京の産業を支えております。大企業を中心に景気に明るさが見られる中、中小企業にまで経済の好循環が波及しなければ、東京の発展、ひいては日本の力強い成長はあり得ません。小さいながらも懸命に頑張っている中小企業の経営基盤を強化し、イノベーションを促進していくことが都政の重要な責務であります。
中小企業の競争力を高めるため、健康、環境、防災など今後成長が期待される産業分野への参入を強力に後押しするとともに、産学公金のネットワークを強化し、中小企業の潜在力を最大限に引き出してまいります。また、経済のグローバル化が進展する中、日本は海外の成長市場の需要も獲得しながら国際社会で生き抜いていかなければなりません。中小企業みずからの技術や製品を強みに世界へ果敢に挑戦できるよう海外展開を積極的に支援してまいります。さらには、日本と世界の未来を創出するベンチャー支援にも力を注いでまいります。若い方々が知恵を働かせ、自分で会社をつくり、新しい仕事にチャレンジしていけるような創業環境を整えていきたいと考えております。そうしたさまざまな施策を講じながら産業力を強化し、東京が日本経済を牽引する機関車としての役割を果たしていきたいと思っております。
続きまして、成長戦略でありますが、東京を世界一の都市にしていくためには、経済を再生させ、持続可能な成長軌道に乗せていくことが重要であります。東京都、は二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けて全力を挙げるとともに、さまざまな中小企業施策などを講じることにより、企業業績の回復を確実なものとし、これを雇用拡大と個人消費の押し上げへとつなげてまいります。これまで、都内の企業は、リーマンショックや行き過ぎた円高など未曽有の危機に遭遇しながら、関係者が協調して困難に立ち向かってまいりました。今後、成長戦略の実現に向けて、ステークホルダーが一層強く共通認識を持てるよう、行政と経営者団体、労働団体を構成メンバーとする協議の場をつくることを検討してまいります。個人消費を拡大し成長を確かなものとするため、強力にリーダーシップを持って取り組んでまいります。
続きまして、都市農業の振興についてでございますが、東京の農業は、農産物価格の低迷などによる収益性の悪化や担い手である農業者の減少など、厳しい経営環境にあることに加え、高額な相続税の負担等により、この十年間で約一千ヘクタールの農地が失われるなど、大都市特有の課題も抱えております。こうした中でも東京では意欲ある農業者が消費者ニーズを素早く捉え、ハウス栽培等により限られた農地を最大限活用し、多種多様な農産物を生産しております。例えば、江戸川区発祥のコマツナは年に六回前後も収穫されており、全国で第二位の生産量を誇っております。また、都が開発したブドウの高尾やキウイフルーツの東京ゴールドなど、高品質で特色のある農産物も数多く生産されております。そこで、さらに農業経営を後押しするため、大消費地を身近に抱える優位性を生かし、農産物のブランド化や加工品開発等により付加価値を高めるなど、経営力向上に向けた取り組みを強化してまいります。また、都市農地の保全を図るため、国に対して、農地を都市に有用な存在として位置づけるとともに、税制度などの改善を行うよう引き続き強く求めてまいります。加えて、都独自の取り組みとしても、区や市と連携して防災や環境保全など農地の持つ多面的な機能を生かしながら、都市農地保全を図るプロジェクトを展開してまいります。
次に、多摩地域についてでございます。東京は政治経済の中枢機能が集中する二十三区のほか、都市機能と自然環境が融合した多摩地域、広大な排他的経済水域を有する島しょ地域がそれぞれの個性を発揮しながら相互に補完し合い、調和する美しい首都を形成しております。東京を世界一の都市とするためには、こうした多様な特性を有する都内のそれぞれの地域の発展が不可欠であり、多摩の発展なくして東京の発展はない。多摩地域が直面する少子高齢化の進展や産業の空洞化といった課題は、東京全体、さらには我が国全体に共通する課題でありまして、これらを乗り越えることで東京の未来、ひいては日本の未来を切り開いていかなければなりません。このため、まず多摩振興の取り組みを停滞させることなく推し進めるべく、年度内に新たな多摩のビジョン行動戦略を策定いたします。この戦略を大きな契機として活用するとともに、これから多摩の現場も見させていただき、市町村の話も聞きながら、現場に根差した実効ある取り組みをさらに積み重ね、魅力にあふれた多摩地域を実現してまいります。多摩の発展を東京の発展、さらには日本全体の発展へとつなげるべく、知事としての職責を全力で果たしてまいります。
続きまして、豊洲新市場の整備についてでございますが、築地市場は首都圏の基幹市場として都民の食を支えてまいりましたが、施設の老朽化が著しく、人や物の流れがふくそうしており、急速に変化する流通環境への対応が困難であることから、新たな時代を見据えた新市場の整備が急務であります。豊洲新市場は、温度管理機能を備えた閉鎖型施設による品質、衛生管理、十分な荷さばき場の確保による効率的な物流の実現、さらには多様な顧客のニーズに対応できる新たな施設の設置等により、将来にわたり我が国の拠点市場としての役割を果たしていくとともに、国際的にも通用する市場として整備してまいります。昨年には和食と日本人の伝統的な食文化がユネスコの無形文化遺産として登録され、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックに向けて、新市場が世界中から訪れる多くの観光客に、日本の豊かな食材を提供し、食文化も発信してまいります。先月二十八日、建築工事に着工いたしました。厳しい経営環境に置かれている市場業者の皆様が安心して円滑に移転できるよう、業界のさまざまな意見、要望を伺い、効果的な支援策を着実に実施してまいります。今後とも、これまで以上に関係者との緊密な調整や前向きな支援を図ることはもとより、都議会の皆様のご協力もいただきながら、全力を挙げて一日も早い開場に向け着実に整備してまいります。
続きまして、今後の福祉、保健、医療施策についてでございますが、私は、政治は強い者のためでなく、弱い者のためにあるという考えに立って、東京を世界一の福祉先進都市にすることを公約に掲げました。その実現のために都の特性を踏まえ、大都市東京にふさわしい福祉、保健、医療施策を今後展開していくことが私に課せられた責務であります。日本では、世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進んでおります。東京においても、オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年をピークに人口は減少に転じ、団塊の世代が七十五歳以上の高齢者になる二〇二五年には四人に一人が六十五歳以上になると予測されております。今後の福祉、保健、医療施策を進めるに当たりましては、こうした東京の将来を見据え、自助、共助、公助の三つの力を組み合わせて、未来に夢と希望を吹き込むさまざまな施策を講じていく必要がございます。そのために、私は、まず待機児童の解消を初めとした、安心して子供を産み育てることができる環境の整備、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らし続けることができる地域包括ケアシステムの構築、障害者が地域で安心して暮らし、当たり前に働ける社会の実現、高齢社会に対応した救急医療体制の整備や在宅療養の推進など、安心と希望の医療体制の確保のために、全力で取り組んでまいります。さらに今後、現場を歩き、都民や事業者の声も聞きながら、新たな施策を練り上げることで、都民が安心でき、希望を持てる東京の実現のために、世界一のサービスを提供できる東京モデルをつくり上げていきたいと考えております。
続きまして、福祉施設整備促進のための土地活用についてでございますが、都の少子高齢対策の充実強化を図るためには、保育所や特別養護老人ホームなどの福祉サービス基盤の整備が急務であります。これまでも都有地を活用した福祉インフラ整備事業などを進めてまいりましたが、来年度予算では、都営住宅等の建てかえによる創出用地の福祉施設への活用着手や、容積率の緩和などによる福祉施設の立地促進策の検討経費などを盛り込みました。今後は、こうした取り組みをさらに強化していく必要があると認識しております。地域の状況に即した土地利用方策を検討するチームを関係部局により設置することを指示いたしております。このチームでは、都有地、国有地などの公有地の活用策だけでなく、都市づくりと連携した促進策を含め、民有地の活用策等についても広範に検討してまいります。検討作業を速やかに行い、できるものについては二十六年度内に着手するなど、福祉施設の整備を加速化させていきたいと思っております。
続きまして、私学振興に対する基本的考え方についてでございますが、東京の多くの子供が通う私立学校は、それぞれの学校が建学の精神と独自の教育理念に基づき、自主性を発揮しながら特色ある教育を展開し、東京の公教育を支えております。私立学校の特色として、私立学校には平均はないとよくいわれますが、東京の私立学校も、地域に根差した幼児教育に情熱を注ぐ幼稚園や、質実剛健を掲げる男子校、女子教育の草分けとなる多くの女子校など多彩でございます。こうした多様な私立学校から、子供たち一人一人が独自の校風と教育を求めて共感する学校を選んでおり、親子三代にわたって同じ学校に学ぶという例もあると聞いております。これまでの東京の私立学校は、強みである中高一貫などの教育力を生かして、個性ある教育を展開し、時代のニーズに応える多彩な人材を育成してまいりました。また、国際教育の必要性が叫ばれるはるか以前から英語力の養成に力を注ぎ、今日の日本を支える優秀な人材も輩出してまいりました。今後とも、東京ひいては日本が世界の中で確たる地位を維持していくためには、世界で活躍できるグローバル人材を初め、次代を担う若者の育成が不可欠であります。これを担う私立学校の振興こそ、都政の最重要課題の一つだと考えております。これまでも都は、東京の公教育において、私立学校が果たす重要な役割を踏まえ、学校経営の安定化や保護者負担の軽減など、幅広い支援に努めてまいりましたが、東京の将来を見据え、私立学校のより一層の振興に努めてまいります。
続きまして、オリンピック・パラリンピックについてでございますが、私は吉野議長とともにソチに赴き、IOCのトーマス・バッハ会長、ジョン・コーツ副会長と会談いたしました。さらに数多くのIOC委員と親しくお話しする機会も得て、大会成功に欠かすことのできないお互いの信頼関係を築くことができました。現地では、大会警備とおもてなしとの両立、外国語による意思疎通の重要性などについて改めて肌で感じるとともに、東京大会へ向けて多くの示唆を得ました。昭和のオリンピックから五十年、我々国民にとって、東日本大震災からの復興をなし遂げ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会を成功させるという国家的目標ができた意義は非常に大きいと思います。今回のソチでの経験を役立てて、今後、大会開催までの六年半、組織委員会、JOCなどのスポーツ界、政府、経済界など、オールジャパンの体制で大会準備に全力で取り組んでまいります。二〇二〇年には、聖火ランナーが復興を遂げた被災地を駆け抜け、困難に立ち向かった勇気と、スポーツの力によって希望に輝く人々の姿を全世界に向けて発信いたします。私は、首都を預かる長として、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックを史上最高の大会として成功させたいと考えております。そして、その先に大災害にも打ちかつ強固な都市基盤、誰もがスポーツに親しむ機会の創出、環境負荷が少ない持続可能な社会づくりを通して、次代を担う若者、子供たちにとって安心と希望に満ちた都市を実現してまいります。世界の都市総合力ランキングでは、東京は現在四位。ロンドンがオリンピックをてこに都市力を向上させ、ニューヨークを抜いて一位になったように、オリンピックには都市を大きく変え、飛躍させる力がございます。東京も世界一の都市を目指します。都議会、都民、国民の皆さん方の一層のご支援、ご協力をお願いいたします。二〇二〇年東京大会の文化プログラムを通じた文化の発信についてご質問がございましたが、これにつきましては、オリンピック憲章では、オリンピックはスポーツの祭典であると同時に、文化の祭典でもあることが明確にうたわれております。二〇一二年のロンドン大会では、英国の歴史と文化を象徴する数多くの文化プログラムが展開され、成熟都市で開催した大会として成功をおさめました。私が長年過ごした芸術の都パリでは、オペラやモナリザなどの芸術文化が都市の装置として組み込まれ、フランス人はもとより世界中の人々を引きつけております。東京が成熟した都市としてさらに高い評価を得るためには、国際的に通用する文化面の魅力を高め、世界にアピールすることが重要だと痛感しております。東京の文化にはさまざまな魅力がありますが、十九世紀の印象派以降の世界の美術の発展に大きな影響を与えた浮世絵などの江戸文化や伝統工芸、世界無形文化遺産に登録された和食はもとより、アニメ、ファッション、デザインに至るまで、世界に誇り得るものが数多くあります。こうした文化は、東京に集積する多くの民間の文化団体や芸術家が活発に活動することで実現されております。民間企業がこれらを積極的に支援し、都民も生活の中で文化を楽しむ風土が根づくなど、東京の文化は民の力が大きく働いております。二〇二〇年東京大会を文化の祭典としても成功させるには、こうした東京の芸術文化の魅力を世界中の人々に体験してもらうとともに、世界中の芸術家が東京での創作活動を通じて交流を深めるための準備も進めていく必要があります。私も、都立文化施設はもとより、まず都内の国、区市町村、民間が経営する美術館やホールを訪問し、館長など責任者から意見を聞くなど、実態をできる限り早く把握したいと思っております。今後、東京が文化の魅力を世界に発信するためには、二〇二〇年の東京大会を絶好の機会と捉え、先進的で他に類を見ない文化プログラムを策定し、国内外の文化団体や芸術家の知恵を結集した、文化の面でも最高のオリンピックを実現していきたいと考えております。なお、その他の質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。ありがとうございました。
〔教育長比留間英人君登壇〕
◯教育長(比留間英人君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、都立高校生の社会に貢献する志と行動力の育成についてでございます。我が国や社会の発展のためには、高校生のうちから一人一人が国際社会の一員としての自覚と行動力を持ち、社会に貢献する意欲を高めることが重要であります。都教育委員会は、平成十九年度から全ての都立高校で「奉仕」の授業を導入するとともに、昨年度からは一泊二日の宿泊防災訓練を実施し、社会に貢献する意識や実践力を高める取り組みを進めております。来年度はJICAと連携し、高校生向けの宿泊体験研修に生徒を派遣いたします。この新たな研修は、海外事情を理解し、ボランティア活動に必要な態度や技術を学ぶものであり、こうした取り組みにより国際社会に貢献する意識と主体的な行動力を持った生徒を育成してまいります。
次に、英語教育の充実に向けた取り組みについてでありますが、六年間学んでも多くの日本人が英語で意思の疎通ができない現状があり、学校における英語教育を一層充実させていく必要があります。都教育委員会は、昨年度、高校生の留学を支援する次世代リーダー育成道場を開始し、今年度は規模を二百人に拡大して実施をしております。平成二十六年度には、外国語教育の充実と国際交流の発展を目的としたJETプログラムを活用し、外国青年百人を招致するほか、在京外国人の活用をさらに拡大し、都立高校の一、二年生全員が外国人による指導を受けられるようにいたします。これらに加えて、少人数英語指導の充実や英語指導重点校の設置、教員の指導力向上に向けた海外研修の実施など、生徒の英語力を高めるための取り組みを推進してまいります。
次に、公立小中学校の冷房化についてでありますが、都教育委員会は、児童生徒が多くの時間を過ごす普通教室の冷房化について、平成二十二年度より都独自の補助事業を実施し、今年度末で冷房化率は一〇〇%となる見込みであります。また、特別教室の中にも、防音のため窓があけられないなど、早急に教育環境の整備が必要な教室があり、これらの教室についても、都独自の冷房化への支援を求める市町村からの要望がございます。このため、都教育委員会は、公立小中学校の音楽室、視聴覚室、図書室及びパソコン教室について新たな補助の対象とし、教育環境の充実を図ってまいります。
〔東京都技監藤井寛行君登壇〕
◯東京都技監(藤井寛行君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、鉄道ネットワークの充実についてでございますが、都市の機能や利便性を高めていく上で、鉄道ネットワークの充実を図ることは重要であると認識しております。都は、国や鉄道事業者などと連携し、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた路線の実現に向けて取り組んでおります。答申におきまして、平成二十七年までに開業することが適当とされた都内の十六路線につきましては、既に開業、または事業中でございます。一方で、平成二十七年までに整備着手することが適当とされた路線につきましては、事業主体や事業採算性などの課題があり、未着手となっております。国は、運輸政策審議会答申第十八号の目標年次が近づいていることから、来年度から審議会におきまして、東京圏の高速鉄道を中心とする交通体系のあり方などについて議論を行い、平成二十七年度ごろを目途に審議会答申を取りまとめることを検討中と聞いております。
都といたしましても、審議会答申に向け、来年度、学識経験者などで構成される委員会を設置し、基本的事項の検証が必要な路線につきましては調査を実施するなど、都における今後の鉄道ネットワークのあり方などにつきまして、国の動向を踏まえながら調査検討を進めてまいります。
次に、首都高速道路の大規模更新についてでございますが、首都高速道路は、一日百万台もの自動車が利用する首都東京の大動脈でございまして、今後もその機能を確保していくためには、大規模更新などの老朽化対策を計画的に実施していくことが不可欠でございます。大規模更新の財源につきましては、民営化時に定められた四十五年間の償還計画に含まれていないため、新たに財源の確保が必要となります。そのため、国は高速道路会社の料金徴収の期限を十五年延長する法案を今通常国会に提出し、現在、国会審議がなされております。こうした動きを踏まえ、都は首都高速道路株式会社が早期に大規模更新に着手できるよう、国など関係機関と連携して取り組んでまいります。
最後に、多摩地域のインフラ整備についてでございますが、多摩地域には、生活や交通の拠点となる地域が点在しておりまして、これまでも幹線道路の整備や多摩都市モノレールの導入などにより、地域の利便性や拠点間の交通ネットワークの向上を図ってまいりました。多摩地域のポテンシャルをさらに引き出していくためには、人、物の円滑な流れを確保していくことが重要でございまして、その実現に資する交通ネットワークの充実が必要でございます。今後とも、魅力にあふれ、活力に満ち、安全・安心が確保された多摩地域を目指すべく、多摩地域における交通インフラの充実強化に取り組んでまいります。
〔環境局長長谷川明君登壇〕
◯環境局長(長谷川明君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、環境分野における国際協力についてでございます。都はこれまで、北京市やアジア大都市ネットワーク21の会員都市などに対して、大気環境や廃棄物処理の改善に向けた人材育成などの技術協力を行うとともに、国際会議などを通じ、キャップ・アンド・トレード制度など、都の先駆的な取り組みについて積極的に発信してまいりました。アジアの諸都市においては、経済発展とともに、大気汚染や増大する廃棄物などの問題が深刻化しており、今後、都は、過去に同様の課題を克服してきた経験を生かし、アジア大都市ネットワーク21の枠組みなどを活用して、都の持つ政策ノウハウや技術を各都市のニーズに応じて、より具体的かつ実践的な形で提供してまいります。また、ことし六月には、気候変動対策に取り組む都市の国際的なネットワークでありますC40と共同で東京ワークショップを開催し、日本のすぐれた建築物の省エネ技術を世界に発信してまいります。これらにより、アジアを初めとする世界の大都市との環境分野における連携をさらに深めてまいります。
次に、エネルギー消費量削減に向けた取り組みについてでございますが、都はこれまで、大規模事業所に対するキャップ・アンド・トレード制度、中小規模事業所に対する省エネ税制を通じた設備改修や無料省エネ診断による運用改善、家庭への省エネアドバイザーの派遣を実施するなど、省エネルギー対策の推進に努めております。こうした取り組みに加え、省エネポテンシャルが大きいにもかかわらず、取り組みが進んでいない分野について、来年度から新たに支援を行ってまいります。具体的には、熱の有効利用など、エネルギー利用の効率化の余地が大きい中小医療福祉施設や、省エネ改修のインセンティブが働きにくい中小テナントビルなどに対し、設備の導入等を促進してまいります。今後とも、エネルギー消費量削減目標の達成に向けて、都民、事業者の省エネへの取り組みを積極的に後押ししてまいります。
〔生活文化局長小林清君登壇〕
◯生活文化局長(小林清君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、海外広報の具体的取り組みについてでございますが、都が新たに導入する海外向けの都市広報を展開するためには、東京への関心を喚起する魅力的な内容づくりと、世界のさまざまな地域に合った効果的な発信方法が重要であります。このため、欧米、アジアなど、エリア別に関心のある情報内容やメディア状況等を詳細に把握する調査を実施するとともに、国内外のメディアとも連携するなど、民間の力や外国人の視点を十分に活用してまいります。具体的には、まず日本のテレビ局と連携し、都の取り組みを紹介するミニドキュメンタリー映像を東南アジアやインドのテレビ局に今月から配信するとともに、海外に十分知られていない東京の魅力を掘り下げて紹介する新たなPR映像を制作し、欧米向けにもインターネットなどを通じて発信を行ってまいります。また、外国人から見た東京のよさを発信していく必要があることから、海外から記者を招聘し、日本人が気づかない、外国人から見るとユニークな生活や町の様子などを、映像や記事で海外に紹介をしてまいります。さらに、現在、在住外国人向けに情報を提供している外国語版都庁総合ホームページを、海外在住者も対象にした海外向け情報発信のポータルサイトとして全面的にリニューアルし、観光客の誘致策とも十分連携しながら、海外への発信力を強化してまいります。
次に、国の就学支援金制度の見直しを受けた私立高校生の特別奨学金についてでございます。都は、効果的な修学支援を行う観点から、現在、一定所得以下の保護者を対象とした特別奨学金の給付により、所得に応じて授業料の一部を補助しております。国の就学支援金制度につきましては、来年度から所得制限が導入され、低所得者に対する加算を拡大するとともに、生活保護世帯や住民税非課税世帯を対象とした奨学のための給付金が創設されることとなり、その基準や給付単価が示されたところでございます。都といたしましては、これを踏まえ、所得に応じて区分を設けて補助する特別奨学金のこれまでの考え方を堅持するとともに、国の制度に基づく給付とあわせて、所得区分ごとの給付のバランスも勘案して給付額を充実させ、より政策効果を高めてまいります。具体的には、奨学のための給付金の対象とならない年収二百五十万以上三百五十万円までの低所得者層と、三百五十万円から五百九十万円の所得者層について、補助率を引き上げるなど、保護者の負担軽減を図ってまいります。
最後に、文化プログラムの具体化に向けた取り組みについてでありますが、平成二十七年二月に組織委員会がIOCへ提出する二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催基本計画には、文化プログラムについても基本的な内容などを盛り込むこととしております。文化プログラムを魅力的なものにするためには、都立文化施設や都市公園など、都が保有する文化資源を最大限に活用するとともに、東京はもとより、全国から伝統文化や音楽、アートなどの芸術家の参加を得て、民間による文化の力を結集することが重要であります。このため、本年二月には、ロンドン大会の文化プログラム責任者から意見聴取を行い、組織委員会とロンドン市、さらには芸術文化の推進組織であるアーツカウンシルが連携し、一体となって取り組んだことが成功の要因であったなど、有益な助言をいただきました。引き続き、都内を中心に、民間文化団体や芸術関係者から幅広く知恵を集めてまいります。あわせて、機運醸成を図るために、国内外の文化団体等との意見交換や国際シンポジウムの開催などに取り組んでまいります。さらに、文化プログラムの実施に向けては、民間のすぐれた芸術活動への支援が必要であることから、日本で初めての支援機関として発足したアーツカウンシル東京について、本年四月から体制の強化を図ってまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕
◯総務局長(中西充君) 高度防災都市づくりについての三点のご質問にお答えいたします。
まず、発災時の初動対応の実効性向上についてでございます。発災後七十二時間は、災害の状況に応じた迅速かつ円滑な救出、救助活動が重要となります。このため、各機関の連携方法等を定めた首都直下地震等対処要領の年度内策定に向け、二月六日に図上訓練を実施し、被災地域、救出救助活動拠点、災害拠点病院を結ぶ救助ルート確保などの検証を行いました。今後、対処要領の実効性を高めるため、大規模救出救助活動拠点となる公園などへの通信設備を整備するほか、自衛隊東部方面総監部との通信手段の確保や、災害情報システムの改修による区市町村との連携強化も図ってまいります。さらに、複数の大規模公園などにおいて、対処要領で定めた取り組みを検証するための訓練を来年度に実施するなど、今後とも発災時の対応力向上に取り組んでまいります。
次に、大島の復興に向けた取り組みについてでございます。大島の復興には被災者の方々の生活再建はもとより、島の基幹産業の一つでございます観光業の復興、被災した元町地域を中心とした防災対策の推進と将来に向けたまちづくりが重要でございます。このため、都は、応急仮設住宅を建設し、島内で処理することが困難な瓦れきを島外へ搬出するとともに、町の産業復興に向けて、椿まつりに合わせた観光キャンペーンや、被災事業者への金融支援などを実施しております。また、元町地域のさらなる土砂災害を防ぐ応急対策といたしまして、ことしの梅雨期までに堆積工の機能強化などを行うとともに、今回の災害を受けて設置した伊豆大島土砂災害対策検討委員会において、今月中に本格的な復旧対策を取りまとめます。加えまして、町への都職員への派遣や災害復旧・復興特別交付金も活用しながら、復興計画の策定を初めとする大島町の取り組みを支援してまいります。都は、今後も大島の復興に向け、全庁を挙げて取り組んでまいります。
最後に、消防団活動の強化に向けた取り組みについてでございます。発災直後から迅速に救出、救助活動を行うためには、地域に密着し、即応力のある消防団の役割は重要であり、特に首都直下地震等の際には、各所で火災等の被害が想定され、都内全域での地域防災力の確保が必要でございます。今年度は、東京消防庁とも連携して、団員の確保に取り組むとともに、安全靴や無線機などの作業を進めました。今後、特別区消防団の資器材の充実や、多摩・島しょ地域の消防団のニーズに合わせた救助、救命用機材等のさらなる整備を促進するとともに、消防訓練所での研修を充実することで機能向上を図るなど、都内全域を視野に消防団の災害対応力の強化に積極的に取り組んでまいります。
〔下水道局長松浦將行君登壇〕
◯下水道局長(松浦將行君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、下水道における豪雨対策についてでございますが、近年の雨の降り方が従前と異なることや、昨年、区部において、豪雨による甚大な浸水被害が生じたことを踏まえ、雨水整備水準の引き上げなどを含め、新たな視点から、豪雨対策下水道緊急プランを昨年末に策定いたしました。主な取り組みとしては、都内の四地区で既存幹線の下に新たな幹線を整備するなど、時間七十五ミリの降雨に対応できる施設を建設します。また、六地区で新たな幹線の整備や既存の貯留施設の活用などを実施し、時間五十ミリを超える降雨に対しても被害を軽減いたします。このほか、点在する浸水被害のあった地域につきましても、区などと連携し、きめ細かな対策を実施してまいります。施設整備に当たりましては、一部完成した施設を暫定的に稼働させるなど、浸水に対する効果を早期に発現させ、安全で安心な東京のまちづくりに貢献してまいります。
次に、今後の下水道のエネルギー対策についてでございます。従来の高度処理と比べ、二割以上使用電力を削減する新たな高度処理技術の開発、導入や、現在未利用の汚泥焼却時の低温廃熱を利用した新たな発電など、再生可能エネルギーの活用を推進いたします。また、一年を通じて、電力ピーク時の使用電力を抑制し、需給調整に貢献する新たなシステムの構築などを進めていきます。さらに、水処理から汚泥処理までの一連の処理工程を通じたエネルギーの最適化や、より広域的な視点から、複数の施設間で汚泥の適切な配分を行い、効率的な運転管理などを実施してまいります。このような取り組みを下水道事業初のエネルギー基本計画、スマートプラン二〇一四として今後策定し、エネルギー対策の視点から、お客様への下水道サービスの充実強化を図ってまいります。
〔建設局長横溝良一君登壇〕
◯建設局長(横溝良一君) 無電柱化事業の今後の取り組みについてでございますが、都は、これまでのセンター・コア・エリアを中心とした取り組みに加え、今後は、環状七号線や東八道路などの周辺区部や多摩地域に区域を拡大し、緊急輸送道路等の無電柱化を推進してまいります。また、区市町村に対しては、補助対象の路線を拡大するとともに、連絡会議などを活用して連携を強化し、市街地などにおける電線の地中化を促進してまいります。
特にセンター・コア・エリアにおいては、計画の道路幅で完成している都道の工事を前倒しし、オリンピック・パラリンピックの開催までに完了させるとともに、競技場周辺などについては、区市に対する補助率を四分の三から四分の四に引き上げ、地元と合意したエリアの無電柱化に取り組んでまいります。さらに、早期に新たな五カ年計画を策定し、事業を積極的に推進することにより、電線のない美しい景観を生み出し、安全で快適な都市空間を形成してまいります。
〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕
◯産業労働局長(塚田祐次君) 六点のご質問にお答えいたします。
まず、設備投資の活性化についてでありますが、都内中小企業が成長へ向けた設備投資を進めることは、東京の産業の競争力を高めていくために極めて重要であり、資金面の負担など、中小企業の実情を踏まえた効果的な支援策を講じる必要があります。このため、都は、来年度、成長分野への参入や付加価値の高いものづくりを目指す中小企業を対象に、設備投資に必要な経費を助成する新たな制度を開始いたします。中小企業振興公社に二百億円の基金を造成するとともに、小規模事業者に対しては助成率の優遇も行います。また、制度融資の新たなメニューとして、設備更新・企業立地促進融資を創設し、設備資金を低利で融資するとともに、利用者の負担軽減を図るため、信用保証料について都が最大で五分の四を補助いたします。こうした多面的な支援により、都内中小企業の設備投資に向けた積極的な取り組みを強力に後押ししてまいります。
次に、創業の促進に向けた取り組みについてでありますが、東京が将来にわたる成長を実現するためには、創業の一層の促進を図ることが重要であり、起業を志す人材の多様化や起業をめぐる環境の変化などを踏まえた新たな支援を展開する必要がございます。このため都は、将来の起業を目指す優秀な人材や大手企業からの独立を考える人材が切磋琢磨し、起業経験者や投資家などの実践的な助言を受けながら、短期間でビジネスを実現できるよう、宿泊滞在機能を備えたインキュベーション施設を、渋谷区にある土地信託ビルのコスモス青山内に平成二十六年度中に開設いたします。また、今後の創業の担い手として期待される女性や若者、シニア層を対象として、資金供給と経営サポートを組み合わせた新たな支援の枠組みを、地域の金融機関である信用金庫や信用組合と連携して創設いたします。こうした取り組みにより、都内における創業の促進を図り、成長の実現につなげてまいります。
次に、中小企業に対する金融支援の強化についてでありますが、都内中小企業の円滑な資金繰りを支援するためには、新たな事業展開や経営の安定化など、事業者の実情やニーズを踏まえ、きめ細かく対応することが重要であります。このため、制度融資では、設備更新などの前向きな取り組みを後押しするとともに、経営改善を進める企業向けの特別借換融資について、新たな事業資金を上乗せできるよう制度を拡充いたします。これに加えて、小規模企業向けのつなぎ融資メニューを設けるなど、制度全般の充実を図ります。また、中小企業の資金調達の機会を広げるため、企業が有する売掛債権や機械、設備などを担保に活用した都独自の動産債権担保融資制度を創設いたします。
このような多面的な取り組みを通じて、都内中小企業の資金繰り支援に万全を期してまいります。
次に、観光振興についてでありますが、オリンピック・パラリンピックの開催決定によって東京への国際的な関心が一段と高まるこの機会を最大限に生かし、民間とも連携して、より効果的に旅行者誘致を推進することが重要であると認識しております。このため、外部の有識者による検討会を設置し、東京の魅力を強く印象づけるブランディング戦略を構築するとともに、海外に向けて東京を幅広くアピールするキャンペーンを展開いたします。また、モニター旅行者の体験に基づく観光情報を多様な手段を駆使して提供するなど、東京が持つさまざまな魅力の発信を充実いたします。さらに、来訪者の満足度を一層高めるため、都民や事業者等と連携し、旅行者をきめ細かく支える観光ボランティアの育成や、近年増加しているムスリム旅行者の滞在環境の向上に努めてまいります。こうした取り組みを通じ、旅行者に選ばれ、何度も訪れたくなる世界有数の観光都市を目指してまいります。
次に、若者や女性、高齢者への就業支援についてでありますが、東京が持続的に発展していくためには、意欲のある方々が能力や希望に応じて仕事につき、中小企業や身近な地域で活躍できるように支援することが重要であります。都はこれまで、きめ細かいカウンセリング等により、求職者と中小企業とのマッチングを図るとともに、地域における就業を後押ししてまいりました。来年度は、若者の安定した就業を支援するため、セミナーと実践的な企業実習を組み合わせ、さらに実習生を採用する企業へのインセンティブも取り入れた事業を開始するなど、正規雇用化への重点的な取り組みを行います。また、仕事と家庭を両立させながら働こうとする女性に対しては、専用相談窓口をしごとセンターに設置するとともに、女性の活躍促進に取り組む中小企業団体等への支援や、子育て中の女性向け職業訓練の充実等を図ります。さらに、高齢者の就業を推進するため、シルバー人材センターの会員の拡大や就業機会の確保を強力に進めるとともに、地域で高齢者が働くモデルとなる取り組みに対して支援を行います。こうした多様な取り組みにより、働く意欲のある若者や女性、高齢者の就業を積極的に支援し、東京の発展を人材面から支えてまいります。
最後に、障害者の就業促進についてでありますが、障害者が自立した生活を送るためには、適性に応じ能力を発揮できるよう就業を後押しすることが重要であります。都はこれまで、障害者雇用の機運醸成のため、企業に対する普及啓発を進めるとともに、障害者の職業訓練やマッチングに向けた企業合同説明会、定着支援のための専門家派遣など、多様な取り組みを行ってまいりました。来年度は、これらの施策を着実に進めるとともに、障害者雇用を拡大しようとする企業の動きを捉え、よりきめ細かな支援を展開いたします。具体的には、職場体験実習に対する支援の充実や各種セミナーの開催に加え、地域の就労支援機関を通じて、就職した職場で働き続ける上での課題と効果的な対応事例を収集し、広く発信するなど、定着支援を強化いたします。さらに、精神障害者を初めて雇用する中小企業等に対して、採用前の環境整備から採用後の雇用管理まで、専任のアドバイザーが一貫してサポートを行う事業を開始し、精神障害者の雇用を促進いたします。今後とも障害者の就業支援に全力で取り組んでまいります。
〔水道局長吉田永君登壇〕
◯水道局長(吉田永君) 首都東京の安定給水の確保についてでありますが、当局の使命であります将来にわたる安全でおいしい水の安定供給には、今後、施設の更新や管路の耐震化などの整備に約五兆円の費用と数十年に及ぶ事業期間を必要といたします。このため、優先順位を踏まえた十年後の目標と具体的な取り組みを、マスタープランとして四月末までに取りまとめてまいります。このプランには、渇水リスクを大幅に軽減できる八ッ場ダム建設や、災害や事故時も含め安定給水を確保して行う浄水場更新、さらには、首都直下地震に備えた震災対策などを盛り込むこととし、局を挙げて着実に推進してまいります。これにより、オリンピック・パラリンピック開催期間中も含め、将来にわたる首都東京の安定給水の確保に万全を期してまいります。また、我が国の水道事業の牽引についてでありますが、当局では、都議会自由民主党の提言などを踏まえ、耐震継ぎ手管への取りかえをほぼ倍増して進めるとともに、代替施設を整備しながら浄水場の更新を着実に実施することとしております。一方、全国の水道管路の耐震継ぎ手率は、いまだ低い水準にとどまっているとともに、浄水場の老朽化も深刻な課題となっております。このため、当局が今後十年間に取り組むべき施策を盛り込んだマスタープランを、全国の水道事業体で処方箋として提示し、我が国の水道が抱える課題解決につなげてまいります。
〔交通局長新田洋平君登壇〕
◯交通局長(新田洋平君) 都営地下鉄のサービス向上についてでございます。これまで交通局では、安全・安心の確保を最優先に、質の高いサービスの提供に努めてまいりました。具体的には、都営地下鉄全百六駅で、エレベーター等によるホームから地上までのワンルートを確保し、三田線、大江戸線全駅にホームドアを整備したほか、東京メトロと連携してさまざまなサービス向上にも取り組んでまいりました。今後、東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催も見据え、まずは、新たに新宿線にホームドアを設置しますとともに、東京メトロと連携して、乗りかえ駅のエレベーター整備のほか、外国人旅行客に向けた乗車券の発行や案内表示の充実を進めるなど、誰もが利用しやすい地下鉄を目指し、ハード、ソフト両面にわたって、さらなるサービスの向上に取り組んでまいります。
〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕
◯青少年・治安対策本部長(河合潔君) 通学路防犯設備整備事業についてお答えいたします。小学校の通学路における防犯カメラの設置は、子供の見守りに関する地域の人々の自主的な活動を深める好機となることに加え、犯罪や事故の防止にも資することから、子供の安全を確保する上で大変有効であります。都はこれまで、町会や商店街の設置する防犯カメラに対し、積極的な支援を行ってまいりましたが、これらによりカバーされる地域と通学路の区域は必ずしも一致しないため、犯罪のループホール、すなわち子供の見守りに、空間的にも、時間的にも抜け穴が生じないように、この事業を実施するものであります。今後、事業の執行を委任する教育庁と連携し、きめ細かな制度設計を行うとともに、区市町村や地域団体の意向を踏まえながら、広くこれを普及させていく所存であります。よろしくお願いいたします。
〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕
◯福祉保健局長(川澄俊文君) 五点の質問にお答えいたします。
まず、在宅療養の推進についてですが、都は、病院から在宅への円滑な移行等を調整する在宅療養支援窓口を設置する区市町村への支援、複数の在宅医が相互に補完し、二十四時間体制で訪問診療等を行う地区医師会への支援、医療、介護従事者に対する研修など、在宅療養の推進に向けてさまざまな取り組みを行ってまいりました。また、今年度から、病院が入院早期から退院後に向け、取り組むべき事項をまとめたマニュアルの作成に着手しており、来年度は、入院患者の在宅移行支援や在宅療養患者の緊急受け入れを一層推進するため、地域医療を担う二百床未満の指定二次救急医療機関に対し、看護師や社会福祉士などの職員配置を支援いたします。今後とも、医療と介護の連携を一層強化し、地域における在宅療養体制の整備を推進してまいります。
次に、後期高齢者医療の保険料改定についてですが、都は、本年四月の保険料改定に当たって、これまでの改定時の対応や東京都後期高齢者医療広域連合からの強い要請を踏まえ、特段の措置として、財政安定化基金の残高を活用し、保険料の増加を抑制することといたしました。お話のように、現在、国は、社会保障制度改革国民会議の報告を踏まえ、医療保険制度の改革を順次進めており、高齢者医療制度のあり方についても、必要に応じ、見直しに向けた検討を行うこととしております。後期高齢者医療を初めとした医療保険制度の見直しに当たっては、給付、負担の両面から公平性を確保し、将来にわたり安定的で持続可能なものとなるよう、構造的課題や財源の確保策等について十分な議論が必要であり、今後とも国に対し、積極的に提案要求を行ってまいります。
次に、高齢者の住まいの整備についてですが、高齢者の地域での生活を支えていくためには、適切な住まいを選択し、ニーズに応じて必要なサービスを受けることができる環境整備を進めることが重要でございます。このため都は、来年度、特別養護老人ホームや老人保健施設の整備費補助を増額するほか、区市町村が特別養護老人ホームを共同で利用する仕組みを構築いたします。また、サービスつき高齢者向け住宅や都市型軽費老人ホームなどの整備にも取り組んでまいります。さらに、住宅に困窮し、日常生活に不安のある低所得の高齢者等に対しては、住まいの確保と見守り等の生活支援の提供を一体的に行う区市町村の取り組みを支援するなど、さまざまな手法を活用しながら、高齢者が安心して地域で暮らすことのできる環境整備を一層促進してまいります。
次に、障害者施策の充実と新たな計画についてですが、都は、障害者が地域で安心して暮らし、当たり前に働ける社会、全ての都民がともに暮らす地域社会の実現を基本理念に掲げ、地域生活基盤の整備や就労支援など、さまざまな取り組みを進めており、来年度予算においても、広域的な行事への手話通訳等の派遣、手話のできる都民の育成、障害者福祉施設の共同受注体制を強化するためのモデル事業の実施など、施策の充実を図っているところでございます。 また、来年度取りまとめる新たな計画は、これまでの基本理念や施策を改めて検証した上で、障害者総合支援法の施行や二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催等を踏まえ、障害者の方々の意見も聞きながら、まちづくりも含め、ハード、ソフトの両面から幅広く施策を検討し、策定していく考えでございます。
最後に、子育て支援策の充実についてですが、都はこれまで、全ての人が安心して子供を産み育てられるよう、さまざまな施策を通じて環境整備を進めてまいりました。来年度は、さらに都独自に、特定不妊治療費助成の上乗せを実施するとともに、出産前後に家族等の援助が受けられない母親を対象に、親子で宿泊するショートステイや相談支援に取り組む区市町村への支援を拡充いたします。また、保育所の施設整備に係る事業者や区市町村の負担のさらなる軽減、定期借地権を利用した保育所整備に係る区市町村への補助率のかさ上げ、株式会社やNPO法人などが行う施設整備に対する独自補助を実施いたします。さらに、親同士が地域の中で気軽に交流できる子育てひろばの機能強化や、社会全体で子育て支援を進めるための東京子育て応援ファンドを創設いたします。今後、東京都子供・子育て会議の議論も踏まえながら、こうした妊娠から子育て期に至る切れ目のない支援策を一層充実させ、来年度策定する東京都子供・子育て支援事業支援計画にも盛り込んでまいります。
〔病院経営本部長醍醐勇司君登壇〕
◯病院経営本部長(醍醐勇司君) 二点のご質問にお答えします。まず、患者支援センターにおける在宅療養への移行に向けた取り組みについてでありますが、高齢化の進展により、長期の療養生活が必要な患者やがん患者が増加するため、都立病院においても、これまで以上に患者、家族を支える相談機能や在宅療養等に円滑に移行できるような支援体制の充実が求められております。そのため、区市町村が取り組んでいる、地域における在宅療養支援のネットワークに、患者のニーズを適切に結びつけていく必要がございます。都立病院では、患者支援センターを地域の医療機関や地域包括支援センター、訪問看護ステーションなど、在宅療養の担い手と病院をつなぐ組織として位置づけ、患者の在宅療養への移行、地域生活への早期復旧を支援してまいります。
次に、患者支援センターの機能と今後のスケジュールについてでありますが、都立病院の患者支援センターは、複数の職種で組織、運営し、病気、療養に関するものはもちろん、経済的な問題や生活上の問題などにもワンストップで総合的に対応して、患者、家族をサポートしてまいります。具体的には、受診や入院生活に関する相談、転院先の紹介など、さまざまな場面で対応するほか、看護師、ソーシャルワーカー、栄養士などによるサポートチームが、地域の医療、福祉関係機関と連携しながら、個々の患者の状態やニーズに応じて在宅療養への移行を支援してまいります。平成二十六年度には、多摩総合医療センターをモデル病院として指定し、課題や効果を検証した上で、平成二十七年度以降、他の都立病院に展開してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕
◯オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 五点のご質問にお答えいたします。まず、都民に身近なスポーツ環境の整備についてでありますが、スポーツ祭東京二〇一三では、多くの都民の協力のもと、全ての市区町村でさまざまな競技会などが実施され、身近な地域でスポーツを楽しむ機運が醸成されました。
二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、こうした機運をさらに高め、都民のスポーツ実施率を世界最高水準となる七〇%にまで引き上げる目標達成のためには、誰もが地域で気軽にスポーツに取り組める環境を整備することが重要であります。そこで、来年度の新たな取り組みとして、都民に身近な市区町村におけるスポーツ施設の新設や増築工事、また、誰もが利用しやすい環境を整備するバリアフリー工事などに対する補助制度を創設いたします。今後、スポーツ都市東京を実現するため、市区町村と連携を図り、都民のスポーツ活動のさらなる促進に取り組んでまいります。
次に、大会組織委員会についてでありますが、大会組織委員会は、競技運営、開閉会式、仮設施設の整備など、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の準備及び運営全般を主体的に担う法人でございます。東京都は、大会を開催する都市として、競技会場となる都立施設を整備するとともに、円滑な大会運営には欠かせない輸送インフラの整備、バリアフリー化の促進など、都市機能を向上させる取り組みや安全対策などにより、大会を成功させる責務を担っております。また、大会に向けた盛り上げや文化、教育プログラムなど、組織委員会と連携協力しながら推進してまいります。今後、大会組織委員会はもとより、国、日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会と密接に連携するとともに、被災地を初め、招致を応援してくださいました全国の自治体と手を携えながら、大会成功に向けてオールジャパンの体制で準備を確実に進めてまいります。
次に、オリンピック・パラリンピックの施設整備についてでございますが、立候補ファイルの会場計画は、各国際競技連盟への説明や現地調査を経て承認を得たもので、招致決定後のIOCとの開催都市契約により、その誠実な履行が求められております。このため、来年二月までに策定する大会開催基本計画では、IOCや国際競技連盟とも密接に協議を行いながら、会場計画の検討を進めていく必要がございます。また、全ての競技会場は、大会開催の前年に実施されるテストイベントまでに確実に整備される必要があることなどから、夢の島ユースプラザなどの大型アリーナ施設などにつきましては、来年度からの基本設計を予定しております。今後は、立候補ファイル記載の施設本体以外に必要となる会場周辺の整備について検討を進めてまいります。加えて、最近の建設物価高騰などを踏まえ、施設整備費の十分な精査を行ってまいります。さらに、重要な点といたしまして、大会後も、都民、国民に末永く親しまれるものとするため、施設の活用策や効率的な管理手法など、後利用計画について十分に検討してまいります。これらの課題に的確に対応し、大会を成功に導くとともに、有形無形の財産を後世に引き継げるよう、施設整備に全力で取り組んでまいります。
次に、競技力向上の施策についてでありますが、都は、昨年開催された東京国体に向けて競技団体と連携し、アスリートの育成と強化を図り、その結果、他の道府県を大きく引き離して、天皇杯、皇后杯を獲得するという成果を得ることができました。今後は、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、開催都市として、これまで培った競技力向上のレガシーを最大限に生かし、東京育ちのオリンピック選手を数多く生み出す取り組みを強力に進めていくことが必要であります。選手が日本代表レベルに達するためには、より高度なトレーニングやトップアスリートとの切磋琢磨が重要であります。そのため都は、来年度から、日本代表選考会出場選手強化事業を創設いたしまして、日本代表を目指す将来有望な選手に対して、競技団体が主催する強化合宿への参加経費や、海外で競技経験を積むための渡航費などに対する支援を行ってまいります。今後、関係機関との連携のもと、より多くの東京育ちの選手がオリンピックを初めとする国際舞台で活躍できるよう、競技力向上施策を強力に推進してまいります。
最後に、事前合宿についてでありますが、事前合宿は、各国、各競技の選手団が独自で実施するものであり、これまでの大会では、各競技の国内競技連盟や大会組織委員会による情報提供などに基づき、各選手団が施設の個別交渉により合宿地を決定していると聞いております。事前合宿のような大会に関連する事業が、競技会場の少ない多摩地域を初め、都外においては被災地で、ひいては日本各地で実施されますことは、日本全体が大会開催に向けて盛り上がることとなり、大変にすばらしいことと考えております。今後は、大会組織委員会において、各競技の事前合宿に求められる要件を確認し、これを満たす候補地の情報をガイドブックやウエブサイトなどの形で、各国のオリンピック委員会などに提供していくことになります。都といたしましても、合宿候補地に関する情報収集や参加国に対する情報提供について、大会組織委員会とともに検討するなど、事前合宿に意欲のある自治体を積極的に支援してまいります。